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 エイワ 復興に際して、提案できることを吟味

 「まず、多くのお客さまや仕入れ先さまから、気持ちのこもったご支援と、応援の言葉をいただきましたことについて、心からお礼を申し上げるものです」――そう語るのはエイワの前中勝彦社長だ。開口一番、そのような言葉が突いて出るのも無理はないかもしれない。東日本大震災で、仙台支店が被災したからだ。

エイワ
前中勝彦社長(中央)、前中忠取締役統括本部長(右)、木崎功太郎氏(左)

 地震による大津波は仙台支店を襲った。当時、事務所にいた従業員が津波にさらわれそうになったが、とっさに物に掴まり難を逃れることができたそうだ。また、営業車で外回りをしていた従業員も寸でのところで近くのマンション階上に逃げ込み、辛うじてことなきを得たという。

 仙台支店に押し寄せた津波は高さ2メートルを越した。人的被害はなかったが、在庫していた製品は言うに及ばず、パソコンなどすべての備品が損耗・損失。営業用のトラックやバン、従業員の自家用車まで、すべてが失われた。

 西宮に本社を構えるエイワは、1995年の阪神淡路大震災を経験していた。本社では今回、大きな揺れが収まってすぐに現地支店と連絡がとれた。だが、そのとき津波の被害までは想定をしていなかったそうだ。ただ、幸いなことに、会社から支給していた携帯電話は防水機能タイプのものだったことから津波で水没しても支障が出ず、従業員の安否確認の際に大いに役立った、そう前中忠取締役は言う。

 仙台支店は壊滅的な被害を受けたが、本社と各支店が一丸となって復旧に向けて支援に取り組む。本社では28日時点でWEBなどを通じ、機器の点検と安全確認を励行する文書を発信。その後も、そのときどきの情報をアップした。仙台支店は周りの支店から人の派遣などの応援を受けながら業務に戻り、5月の時点でほぼ復旧した。その時のことを前中忠取締役は「震災が会社としての一体感を持てるきっかけとなったかもしれない。全員が〈負〉を共有しながら、それを克服し、前に進んでいこうとする気持ちが強くなった」と評している。

 震災の恐ろしさ、その影響の重大さというものを、正しく、肌で知ったエイワ。仙台支店の復旧活動もさることながら、被災地の顧客に対する支援活動に積極的に取り組んでいる。

 「被災地に入ると、どうしても感傷的になってしまう。しかし、感傷に浸るだけではいけないのではないかと思います。現地の皆さまは復興を目指しており、そのためには仕事をしていかなくてはなりません。そういう皆さまがご商売を再開し発展していくのにあたり、我々は一体どういうことをご提案できるのか。お客さまのご商売をいかにサポートすることができるか。そこがもっとも大事だと考えます」――前中社長はこのように言う。

 震災後ほどなく、同社は現地のタイヤ商工協同組合に義援金を手渡す。また、津波で水没した仙台支店の在庫品については商売物にはならないものの、メンテナンスによって使用可能な製品を無償で提供した。さらに、タイヤメーカーや販売会社が進める復旧支援にも協力。これについては長いスパンで、今後もできる限り協力、協賛したいという考えを示している。

「当社も被災しましたが、これまでお世話になってきたお客さまはそれ以上に厳しい状況に置かれています。タイヤ業界に身を置く者として、少しでもお返しすることができたらという気持ちです」と、前中忠取締役も言葉を続ける。

 前中社長が現職に就いたのが今年3月。震災は「さぁ、これから」という矢先のできごとだったに違いない。顧客への挨拶回りなどの計画もあったそうだが、それよりも何よりもまずは仙台支店の復旧、そしてビジネス再開を図る現地顧客のサポートが社長就任後最初の大仕事となった。

 「今は仙台支店も元気に仕事していますよ」、そう言って表情が和らいだ。


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