開発が加速する自動運転やコネクテッドカー、カーシェアリングサービスなど、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化する中、将来のタイヤにはどのような機能が求められていくのか。これまで多くのイノベーションを生み出してきたブリヂストンが目指す姿や将来の可能性を、技術スポークスパーソンの原秀男フェローに聞いた。
――自動運転車などの普及を見据えてタイヤ未来像は。
「コネクテッドカーやシェアリングカーなどが普及すれば、クルマがどの場所にいて、どのように移動しているのか把握できるようになる。
1台の車両を複数で使用するケースでは、AさんとBさんとで運転の仕方が異なるかもしれない。そうした中、タイヤはどのような人が運転しても基本性能を発揮できるようにしなければならない。
個人的な意見だが、将来は車両側でハンドルの舵角やクルマの動きをデータ化し、『Aさんの運転技術は高い』、一方で『Bさんはやや低い』などと判別できるようになるかもしれない。そして『少し危険があるのでスピードを落としたほうが良い』と情報を発信することも可能になるかもしれない。
その際に重要なのは路面が雪だったり、あるいは氷や雨など、どんな状況になってもセンシングできる技術であり、当社には『CAIS』(Contact Area Information Sensing)がある。
シェアカーになった時に、ランフラットタイヤなどパンクしても走行できるタイヤ、あるいは空気圧や温度の異常を検知できるようにタイヤ自体が情報を取ることが重要になってくる」
――CAISが一般の車両にも搭載されるために必要なことは。
「普通車へ装着するには車両自体が双方にコミュニケーションできる仕組みを搭載した方が活用の領域が広がる。この場合、社会インフラと一緒に考えていくことが必要だろう」
――シェアカーの台頭でタイヤの需要は。
「現在クルマを所有している多くの方はガレージに置いているだけだが、シェアリングカーでは頻繁に誰かが使用している状態になる。タイヤの交換は走行距離に比例するため、経済活動や生活が大きく変わらない限り、需要は大きく変わらないと思っている。
ただ、新品タイヤの販売だけでビジネスができる時代は終わる可能性があるだろう。我々はソリューションと言っているが、トラック用タイヤだけではなく乗用車用タイヤもバリューチェーン全体でお客様の成功を支えるためのビジネスが必要だ」
――今後のスタッドレスタイヤの開発は。
「スタッドレスタイヤが高性能化する中、氷の上でもコンクリートの路面と同じような性能を発揮できるタイヤを目指していく。30年後か40年後か分からないが、実現できると思う。
氷の上の水膜を除去するという考え方は今後も続くだろう。ただ、これまではゴムでグリップさせているが、別の材料があるかもしれない。まだ空想だが、今よりはるかに水と親和力がある材料があればできるはずで、そうした研究は進めていく」