横浜ゴムの新中期経営計画「GD2020」で要となっているタイヤ消費財戦略。“技術と品質でプレミアムカーから指定されるタイヤメーカー”を目指し、高性能商品を柱としたプレミアムカー戦略を掲げる中、今年は「ADVAN Sport V105」がBMWの承認を獲得したことが発表された。同社にとって、プレミアムカーの新車装着はどのような意味を持つのか。挾間浩久常務執行役員タイヤ直需営業本部長に話を聞いた。
――「GD2020」で「プレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上」を図るというタイヤ消費財戦略を掲げられた経緯について教えて下さい。
「当社には、世界でもトップクラスの位置を占める国内カーメーカーに鍛えられてきた新車用タイヤの開発技術があります。また、タイヤに環境性能が求められるようになってきてから、それを具現化する研究にも取り組んできました。
このような技術力はあったのですが、これから先を考えると『日本だけでは戦えない、世界へ進出したい』という思いがありました。
そこで、2000年頃から海外カーメーカーへの納入を進め、グローバル展開を図ってきました。また、プレミアムカーに装着されているタイヤメーカーは、高い技術力を持っているものと認識されます。そのため、新車装着の活動を続けることでネームバリューの向上も見込めました」
「ただ、全てのカーメーカーとやり取りをすることは経営資源が限られており難しくもあります。そこで、当社のイメージや得意とするジャンルに沿った取り組みを進めなければならないと考え、今のような活動となりました。
やはり、我々はスポーツタイヤのイメージが強いと思いますし、これから先もそのような世界観を大切にしたいため、プレミアムカーというカテゴリーに注力していきたいと考えています」
各ジャンルのプレミアムカーへ納入を
――BMWの承認を取得し、「X3」や「M5」に「ADVAN Sport V105」の納入を開始しました。
「BMWに採用して頂いたことは大きなアピールになりますし、そのことで当社がお客様に認めて頂けるようになると、商品を取り扱って下さるお店も増えていきます。
また、エンドユーザーが今まで知らなかったYOKOHAMA、あるいはADVANをお伝えできる絶好の機会でもあると考えています。実際に乗って頂いたお客様がタイヤを交換する際には、装着タイヤが良いものであればまた同じ商品を使って頂けるため、好循環も期待できます。
海外カーメーカーとのお取引は欧州だけではなく、もちろん北米でも展開を進めたいと考えております。今年2月にはFCA US LLCのピックアップトラック『Ram1500』に『GEOLANDAR A/T G015』が採用されたことを発表しました。
我々は、スポーツカーだけで成長するというわけではないので、各ジャンルでプレミアムに位置付けられる車への納入を目指しています。全世界でのシェアを上げるためには、様々なカテゴリーでトップを狙っていかないといけないと考えています」
「補修用タイヤ市場では、ネームバリューが高くないと高付加価値な商品はお客様に選んで頂けないと思っています。そのためプレミアムカー戦略は、当社が積極的に展開したいと考えている商品を販売するために必要な戦略なのです。
市場の中で、片方で汎用性が求められていくと、一方で特殊性を求める方が増えてくるのではないでしょうか。国内でも、欧州車に限らず様々なプレミアムカーやピックアップトラックなどの人気が出てくることが考えられます。
スタンダードゾーンの商品も当社にとって重要ですが、私どもの強みやキャラクターを具現化することが、中期経営計画で掲げたプレミアムカー戦略などの活動の狙いとなります」