未来を想像する――モビリティを支える“将来のタイヤ技術”

コンチネンタル 将来のトレンドを見据えた2つの技術コンセプト

「ContiSense」

 コンチネンタルは、より高い安全性と快適性を目指して2017年に2つの技術コンセプト「ContiSense」(コンチセンス)と「ContiAdapt」(コンチアダプト)を発表した。

 2つの技術コンセプトは、同社の中でタイヤ事業を展開するラバー部門と、自動運転技術などの開発を推進するオートモーティブ部門が共同で開発に取り組んでいる。交通事故ゼロを目指した同社独自の目標「ビジョン・ゼロ」や、モビリティを一つのサービスとして捉えるMaaS(マース)が普及した社会に貢献する新技術だ。

 「コンチセンス」は、電気を通すゴムコンパウンドの開発に基づいたコンセプト。一般的にタイヤは最も内側のインナーライナーから外側のトレッド部まで複数の層で構成されている。新技術は複数の層に導電性の素材を採用することで、タイヤの温度やパンク、溝の深さといった情報を収集できる仕組みとなっている。

山中公仁プロジェクトマネージャー
山中公仁プロジェクトマネージャー

 例えばタイヤに釘が刺さった際は、“タイヤの電気回路がショートした”という情報を通じてパンクしたことが分かる。また、導電性の層はタイヤの全周に施されるため、これまで発見できなかったレベルのダメージも検知できる。

 取得した情報は、TPMS(タイヤ空気圧モニタリングシステム)を通じて車両に送信される。コンチネンタルタイヤ・ジャパンOEタイヤ事業部の山中公仁プロジェクトマネージャーは、「ドライバーがタイヤを意識しなくてもタイヤから情報が発信されるため、メンテナンスフリーを実現できる」と、そのメリットを話す。

 さらに、「ディーラーやタイヤ販売店、ガソリンスタンドの方が『ある車両に装着されたタイヤに不具合が生じている』という情報を受け取った場合、ユーザーはそのデータをもとにサポートを依頼できる」といったサービス面での向上も期待される。

ContiAdapt
「ContiAdapt」

 一方「コンチアダプト」は、「コンチセンス」で取得した情報を活用してタイヤを変形させるシステムだ。リム幅と空気圧を変動させることでタイヤの接地形状を変え、様々な路面状況に対応することができる。

 だが、路面への対応は単に一通りというわけではない。

 「ドライ路面で最も燃費が良い状態で走行したいと考えるドライバーに対しては、空気圧を高めて接地面積を最適化する。あるいは石畳のような凸凹のある道は空気を抜いて乗り心地を改善したいと思うこともある。このようにドライバーの意志に応じてモードを選択することも可能になる」

 ただ、滑りやすい濡れた路面や氷雪路への対応は、自動運転技術やIoT(モノのインターネット)技術が普及した将来の環境下での適用を想定する。ある意味“非常モード”としての対応となるため、ユーザーの好みではなく周辺環境からの情報をもとに自動で変形することが求められるからだ。

 例えば、車対車間通信が普及した社会でドライブ中に、1km先の水たまりで、ある車両がハイドロプレーニング現象を起こしかけた――その情報はクラウドからドライバーや周囲の車両に届き、タイヤが一斉にウェットモードへと移行することで安全に走行し続けることが可能となる。

 山中氏は「自動運転技術が進んだとき、乗員が就寝していても車は走行しなければならない。コンチアダプトがあれば、雪や大雨が降ってもタイヤが変形してくれるので自動的に車は進み続けられる」と将来像を語っていた。


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