日本が担う重要な役割
――次の50年に向けた今後の展望を。
「将来のことは非常にオープンマインドです。これからも同じことが繰り返されるのではありません。タイヤも車輌もまだまだ変化し、色々なイノベーションが生まれると思っています。
5年先、10年先にモビリティは変わっていきます。どういう機械で、どうやって人やモノを運ぶのか、そのシステムが大きく変貌していくと思います。この10数年間でミニバン、電気自動車といった新しい自動車のカテゴリーが誕生したように、車自体が変わるかもしれません。さらにCO2を減らし、排気ガスを少なくするための取り組みが進んでいきます。
タイヤにおいても1990年代に我々はグリーンタイヤを発表していますが、これまで以上に環境へ配慮した製品開発に取り組んでいかなければなりません。
将来に向けて、運転自動化技術が研究されていますが、その一方で、自分で運転する楽しさはこれからも残っていくと思います。昨年の東京モーターショーでもドライビング・プレジャーが得られそうなモデルが多数出展されていたように、楽しみながら運転をすることを望んでいる消費者は少なくないはずです。
これからミシュラングループの中で日本の役割も変わってくると思います。もちろん市販用タイヤ、新車用タイヤのビジネスでお客様のニーズに応えるとともに、グループ全体のために日本での研究開発は継続していきます。
その上で日本はビジネスモデルのラボラトリーとしての役割を担っていくと思います。日本では高齢者の割合が増え、先進国の中でも最も早く少子高齢化社会を迎えます。その一方で、どの町にも高速道路や電車がありインフラが整備されているという特徴があります。そして都市部で生活をする方が多いのもユニークです。
また日本の消費者はブランドへの関心が高い傾向がありますが、単にそのブランドが好きというだけではなく、ブランドが持つ歴史やその背景にも関心が高いように思います。そして何よりサービスや品質への要求が非常に高い。こうした成熟した社会で消費者のニーズに応えるために、我々は徹底的にマーケティング活動を行い、新しい需要を生み出していきたいと思っています。
例えば2年前に『満足保証キャンペーン』を始めたように、これまでにないサービスを展開して、成果を挙げることができれば、それを世界中に展開できるかもしれません。
モノだけではなく、消費者のニーズやトレンドといった意味でも日本はマーケットラボラトリーなのです。皆さんの興味がどこにあるのかを研究して、実践して、将来的に同様のトレンドが起こり得る他国の市場に展開できればと思っています。そうした意味からも日本市場の重要性は今後も増していきます」