被災地で車の6割が「不具合」――JAFの点検活動で判明
東日本大震災の被災地では、車両に不具合が認められるケースが多いことがJAF(一般社団法人日本自動車連盟)の点検活動で分かった。同連盟が5月13~28日、宮城県内の計7カ所で「マイカー無料点検サービス」を実施した結果、応急(補充)および要整備(補充の必要)と認められた車両は全体の6割以上を占め、その中でタイヤの「空気圧」と「摩耗・ひび割れ」が最も多かった。被災地における車両の様々な不具合は、津波による冠水や瓦礫、あるいは粉塵による影響と考えられており、現地ではタイヤの点検・整備、またタイヤ整備現場での注意が必要との声が出ている。
JAFは震災で被災した車両の救援活動を行うため「JAFロードサービス特別支援隊」を編成し、被災地、主に被害の大きい宮城県と岩手県に派遣している。被災地では、地震や津波により動けなくなった車両の移動作業などを行っているが、福島原発警戒区域からの車持ち出しでもこの支援隊メンバーが活躍した。
この特別支援隊が5月の一定期間、「マイカー無料点検サービス」を実施し、期間中に延べ334台を点検した。その結果、不具合が認められた車両は210台、62・9%にのぼり、通常の不具合発生率14・2%を大幅に上回った。
点検活動を実施したのは若林体育館、サンピア仙台、石巻基地、七郷市民センター、山元町深山少年の森、岩沼市市民会館、宮城支部の計7カ所。軽自動車156台、普通自動車178台を点検した。
JAFが通常行っているロードサービスの場合でも「タイヤ空気圧(不適正)」はワースト1で全体の20・2%を占めているが、今回の被災地での点検でも全体の20・1%(72件)を示した。また「タイヤ摩耗・ひび割れ」は通常の20・3%に対し18・2%(65件)と若干少なかったものの、これらタイヤに関する2項目で全体の4割近くを占めていることは見逃せない。
また津波により海水を被ったり冠水した道路を通行したことにより、センサー関係が故障してエンジンやエアバッグの警告灯が点灯しているケース、あるいは海水の塩分で錆が生じ、車体やベアリング関係から異音を発生する車両も見受けられたとしている。
目立つタイヤの空気圧不適正、摩耗・ひび割れ
タイヤ整備不良のうち「空気圧不適正」が多いのは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のタイヤ点検結果でも明らかだが、被災地では一層注意が必要だろう。
タイヤの「摩耗・ひび割れ」は程度にもよるが、内部へのクラック成長を疑う必要がありそう。とくに津波被害のあった地域では、場所によっては瓦礫の破片や釘などが道端に残っている場合があり、知らずうちに踏んでパンク、バーストにつながる危険性もある。
被災地を走る警察車両からの注文が多いのはパンクが多いためと推測できる。また気仙沼から仙台に来た車が一回りする間に3本パンクしたという事例もある。
一方で、タイヤを整備する現場でも作業前にタイヤの状態を念入りにチェックすることが大切だろう。とくに中古タイヤや圧の高い太物に空気充てん作業を行う際には、ケージを使うなど安全面に細心の注意を払う必要がある。思わぬ事故に遭わぬよう、改めて確認をしておきたい。