安全なタイヤ整備の実現に向けて――現場で高まる適正作業への思い

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カテゴリー: 特集

顧客への提案が“価値”に

 ――今年8月には「パンク修理作業に関する安全啓発ポスター」を発行しました。

パンク修理作業に関する安全啓発ポスター-h
パンク修理作業に関する安全啓発ポスター

 「従来から『作業をされる方の安全をどう確保するのか』という観点で安全啓発活動を行い、広く周知してきました。それに対して、今回は『危険と判断した場合は、お客様に対してパンク修理をお断りします』という趣旨で初めて作成したものです。ポスターはJATMAと全国タイヤ商工協同組合の連名になっており、作成する際に相談をしましたが、『こういう啓発は是非やって頂きたい』と共感して頂けました。

整備イメージ
確実な点検作業が重要に

 タイヤのダメージが明らかに分かっていても作業を断りにくいケースは少なくないのです。こうした中、『お客様のためにもお断りさせて頂きます』『業界としてこうなっています』と、ポスターを活用してお伝えすることで、ユーザーのご理解を頂けるようになると考えています。

 販売店の方の話では、お客様から『何とか修理して欲しい』と要請されることは多いようです。ですが、整備のプロの目から見ると、『こういうタイヤは修理すると危険だ』というケースがあります。タイヤにひきずり痕が確認された場合など、仮に空気を充てんしてその場では大丈夫だったとしても、走行中にバーストしてしまう可能性はあります。

 本当に事故を防ごうとするならば、ユーザー側にも一層のご理解を頂くことが重要ですし、作業者と事業者の両方のリスクを回避して安全につなげていけると考えています」

 ――ここ数年、タイヤの空気圧不足が増加傾向にありますが、この状況をどう捉えていますか。

 「ドライバーの方々が空気圧不足に気付くチャンスが少なくなっていると感じています。一昔前と比べてもマイカーを点検する機会が少なくなっていますし、将来的にカーシェアリングなどご自身でクルマを保有しないケースが増えてくると、タイヤへの関心が増々減っていってしまうことが危惧されています。

 解決するための特効薬はありませんが、これからも空気圧管理の重要性を伝えて、まずは関心を高めてもらうような活動を継続しなければなりません。

 さらに、空気圧が減っていても補充や充てんの方法が分からないドライバーが増えているように感じます。点検とともに、バルブキャップの外し方やエアゲージの使い方などの具体的な点検方法を啓発していく必要があるのではと思っています」

 ――ユーザーと接する機会が多い販売店の役割も重要になりますね。

 「今までも安全啓発に取り組んで頂いていますが、作業後にドライバーの方へお渡しする際に『空気圧を月に1度、やれる範囲でも良いので必ず点検をして下さい』と、改めてお伝えして頂きたいと思います。タイヤ空気圧や管理方法について、『知らないから何も質問ができない』というお客様が増える時代になれば、啓発のやり方も変わってくるはずです。

 これまでの整備作業はスピードが重要視されていたのかもしれません。ただ、これからタイヤへの関心が低いドライバーの方が増えていくと予想される中、きちんと作業内容を説明して適切な使い方も提案していくことが重要になっていくのではないでしょうか。

 メンテナンスをどのように行うのか、どういった点に気を付けたほうがいいのかなど、潜在的なユーザーニーズはあると思います。こういったお客様への説明、提案が価値につながっていくという認識を持って頂ければと思います」

安全な作業で、事故“ゼロ”の最終目標へ

 ――より安全な作業を実現するために今後のビジョンを。

 「今、販売店さんに一番伝えたいことは冬の繁忙期を迎え、きちんと適正トルクで締め付け、ボルトやナット、ホイールの清掃といった作業を心掛けて頂くことです。事故が起きないようにするのはお店を守るためでもあり、お客様を守るためでもあります。その上で、ご自身の作業を提案につなげていく風土を作り、それを価値に変えて頂くことが重要になると考えています。

 国土交通省から発表される車輪脱落事故やJATMAがまとめている空気充てん作業時の事故など、将来的にはそこをゼロにすることを最終目標としていきたいと考えています。そのために様々な啓発を行うことが我々の責務でありますので、安全への意識や知識、理解を高める活動をこれからも続けていきます」


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