将来に向けた技術コンセプトを相次いで発表している米グッドイヤー。11月4日まで開かれた「東京モーターショー」では、空飛ぶ自動車用に設計した「Aero」(エアロ)やサイドウォール内で苔を生息させるというユニークな発想から生まれた「Oxygene」(オキシジェン)を日本で初めて披露した。グッドイヤー アジア・パシフィック地区のライアン・パターソン社長と製品開発品質担当のデイヴ・ザンジグ副社長に開発への考え方、さらに日本を含めたアジア市場での展望を聞いた。
――コンセプトタイヤの市場展開のイメージを教えてください。
ザンジグ氏「『オキシジェン』は特に都市部での使用を想定しているが、持続可能性を主に考えている。まず、光合成を導入して酸素を生み出し、そして排気ガスをクリーンにするというコンセプトだ。
このコンセプトを開発するにあたり、我々のエンジニアに、『将来はどのようなモビリティ社会になるか、自分たちの想像力を膨らませて欲しい』と話をした。
『エアロ』が実用化されるのは相当先の話かもしれない。それでも私たちはエンジニアに、『将来はどうなるのかを考えて欲しい』と伝えており、エアロダイナミックという新しい構造ができた。『エアロ』が将来的にはプロペラの代わりになるかもしれないし、その可能性を秘めた構造になっている。
これらのコンセプトをそのまま製品化するのは難しいかもしれない。ただ、この中の一部でも将来芽が出る可能性があると考えている。そして、一般消費者から『グッドイヤーは革新的なことに取り組む会社だな』というイメージを持って頂けるようにしたい」
――アジア市場、日本市場での課題と展望をお聞かせください。
パターソン氏「日本は非常に成熟した市場で人口減少が大きな課題だ。人口減に伴い、車両の数も減っていくだろう。ただ、我々は日本において、5年間連続で販売を拡大することができている。
自動車産業全体を見れば、アジアの最大市場である中国とインドで新車販売台数が減少していることは大きな課題だ。ただし、この2つの市場は今後、回復していくのではないかと考えている」
――グッドイヤーは長い間、タイヤメーカーとして世界3位の地位を継続してきましたが強みは。一方でトップのブリヂストンや2位の仏ミシュランと比べて足りないものは何でしょうか。
パターソン氏「我々はライバルに対して尊敬の念を持っている。その上で敢えて言わせて頂くと、ブリヂストンもミシュランもタイヤ以外のビジネス領域が比較的大きく、貢献度が高いように感じる。
一方、当社の最大の強みはブランド力だ。競争できる領域は多くあるが、上位2社に比べて、一般消費者のブランド認知度が高い。また、我々は製品ラインアップが充実していることも強みだ。さらに、自動車メーカー向けでもリプレイスメントの世界でも超一流のお客様とリレーションシップがある」
――アジア市場での目標と、今後の製品開発の考え方は。
パターソン氏「アジア・太平洋地域は、まずは日本での成長、そして日本以外のアジア、特に中国とインドで成長を遂げていきたいと考えている。中国やインドは色々な課題があるが、我々はこれらの市場がいずれ転換すると思っているので、引き続きコミットしていきたい」
ザンジグ氏「グッドイヤーはオールシーズンタイヤにおけるイノベーターであり、商品ラインアップを拡張していきたい。また、製品開発で一番大事なのはタイヤの安全性であり、お客様にとって最も安全なタイヤを提供していきたい。
加えて、今後一層取り組んでいきたいことは燃費の効率性だ。一般消費者の方、顧客からも燃費への要望が非常に多いため、まずはグリップ性能、そして安全性を担保した上で、燃費性能の向上を強力に進めていきたい」