日本ミシュランタイヤ社長が語る日本市場の現況と技術革新

 過去から様々なイノベーション(技術革新)を生み出してきた仏ミシュラン。近年では2017年に将来を見据えた技術コンセプトを発表し、さらにその流れの中で乗用車用エアレスタイヤも披露するなど開発は更に加速している。今後のタイヤはどのように進化していくのか――国内市場の動向とともにミシュラングループとして未来への展望を、日本ミシュランタイヤのポール・ペリニオ社長に聞いた。

市場の重要戦略は今後も“顧客主義”

 ――2019年の日本市場の動向を振り返って。

日本ミシュランタイヤのポール・ペリニオ社長
日本ミシュランタイヤのポール・ペリニオ社長

 「昨年、新車用タイヤは業界全体として厳しかったと思います。市販用タイヤは消費増税の影響があり8月、9月に大きく伸びた後に需要が落ち込みました。全体では前年より多少落ちると思いますが、我々は業界平均を上回りプラスとなる見込みです。

 特に乗用車用タイヤでは17インチ以上の大口径タイヤが好調で、オールシーズンタイヤのマーケットも伸びています。また、トラック用ではワイドシングルタイヤ『X One』(エックスワン)は商用車メーカーがオプションとして採用するケースが増えています。

 近年の市場動向でユニークな点を挙げますと、トラック・バス用タイヤではスタッドレスの販売が伸びているのです。運送会社が人手不足への対応策として、ドライバーへ安全で良いサービスを提供しようとしていることが背景にあるのではないかと思います」

 ――ミシュランがカムソタイヤを買収しましたが、日本でのビジネス展開は。

 「カムソの基本的なターゲットはOHT(オフ・ハイウェイ・トランスポーテーション)となりますが、当然、日本でもカムソジャパンと一緒にこの市場に攻勢をかけていきます。
 我々の生産財タイヤのチームとカムソジャパンでミーティングを重ねており、このカテゴリーでのソリューションを強化していきたいと考えています」

 ――2015年の社長就任時に顧客満足度の向上をテーマに掲げていました。

日本ミシュランタイヤ
トラック用タイヤ事業では業界に先駆けてITサービスを開始

 「調査を行うと、エンドユーザーの満足度は業界の中で高くリピーター率も高いことが分かりました。ただ、市場での競争は激しいのでこれで満足せずに毎年改善していかなければならないと思います。

 同時に市販用タイヤでは我々のタイヤを販売して頂いているディーラーの方々の満足度も高めなければなりません。満足度は上がってきてはいますが、まだ望んでいるレベルには届いていませんし、今後も改善していくことが重要です。

 ディーラーをサポートするための一つの施策としてアイテム数を非常に増やしています。例えば乗用車用タイヤで3年前に販売していたアイテムは約600ですが、2019年は倍の1200アイテムに拡大しています。

 商品のオファーは複雑化していきますので、我々からの情報発信や説明の機会が必要になります。さらに、どうやって在庫をキープし、あるいは配送をサポートするのかまだまだ改善点は多くあります」

 ――2015年11月の社長就任から5年目を迎えての評価は。

ミシュラン新商品発表会
乗用車用タイヤ新商品を発表するポール・ペリニオ社長(2019年12月)

 「我々はチームとして商品ラインアップを増やしたり、トラック用タイヤでITを活用したサービスなどに取り組んだりしてきました。今後強化するべきことはやはり“カスタマーフォーカス”です。エンドユーザーとタイヤディーラー、OEメーカーに対してより良いものを提供していく、この競争は終わりません。

 一方で、時代が変化する中、社員のマインドセットも必要だと思います。今の時代はスピードが求められますので、引き続きエンパワーメント(権限移譲)を強化して次のチャレンジを行いたいと考えています。

 これはミシュラングループ全体で進めていることですが、決定権はお客様の近くに持っていきたい。そうしなければ意思決定が遅くなりますので、決められた範囲の中で自身で判断できるようにしなければなりません。状況を理解しているのは一番現場に近い社員ですから。

 それに合わせてマネジメントのスタイルも変化するべきだと思っています。何か問題があった時に、まずは現場のチームで判断してもらいたい。時間やリソースが足りない時など、彼らが解決できない時にどうやってサポートするかが我々の役割となります」


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