日本ミシュランタイヤ 文化を支え、発展に貢献していく使命
――日本で本格的に事業をスタートしたのはいつからですか。
「2012年からです。それ以前は在庫が少なく、引き合いが来たら取り寄せていましたが、モータースポーツ部門が担当して在庫をきちんと確保し、価格も適正化するなどビジネスとして展開を始めました。
その頃からクラシックカーの人気が高まっており、お客様から要望が増えてきたのですね。ミシュランにはそうしたニーズに応えられる商品がありますので、市場の声に応えていきたいと考えてスタートしました。
クラシックカー向けタイヤは現在、22種類を揃えています。販売本数は2012年と現在を比較すると2倍に増えています。需要が増え、在庫を安定させたことが大きいと思います」
――日本ミシュランタイヤがこの事業をやる意義は。
「充実した時間の提供、ライフスタイルを作るお手伝いをしたいという想いがあります。クルマの性能を最大限発揮させるタイヤを作るのが我々の使命ですが、クルマには最新モデルもあればクラシックカーもあります。
クルマのパフォーマンスを最大限活かして走りを楽しむ、あるいはクラシックカーのパフォーマンスを体感してドライブを楽しむ そのサポートをするために事業を行っています。
大きな利益を得られるビジネスではありません。ただ、ミシュランは長い歴史があり、数ある有名な車両に採用されてきました。既にラインアップがあるので、会社としてやらない手はないと思います。
当社には“最も革新的な企業であれ”という理念があります。ユーザーのメリットになることを最優先にしたいという考えがあります」
――今後の商品拡充の予定は。
「ヤングタイマーと呼ばれる15年から20年ほど前に生産されたクルマは実用性が高く人気が高まっていますので、そういった方に合ったラインアップを増やしていきたいと考えています。
また、エンドユーザーやタイヤディーラーの方々から声を頂くことが多いのはホワイトリボンタイヤです。製造面で難易度が高いのですが、需要があると思いますので、タイミングを見て追加していきます」
――横浜ゴムもこのカテゴリーで事業を強化していますが、ミシュランの強みは。
「横浜ゴムも参入して、市場が盛り上がっていくことは文化の発展につながっていくと思います。我々が誇りに思っているのは当時の見た目と全く同じものを再現している点です。通常、企業ロゴは現行のものしか使用できませんが、古いミシュランマンを使用して、当時の外観そのままに仕上げています。
また、背景や歴史がきちんとあることにプライドを持っています。タイヤに一番求められる安全性をしっかりと確保しながら、外観も乗り心地も忠実に再現しています。
クラシックカーのオーナーの方はタイヤにもこだわりをお持ちの方が少なくありません。ミシュランと決めたら、他のメーカーが同じサイズを持っていてもミシュランをご使用して頂けるのですね。
もちろん、ヨコハマタイヤが強い部分もあります。それぞれの歴史がありますし、これからマーケットを奪い合うカテゴリーではないと思います。それよりも文化的な観点からも共存していければ良いと思っています」
――事業の展望を。
「イベントなどで『ミシュランはまだこんなをタイヤ作っていたんだ』という声も聞きますし、我々が思うよりも認知されていない部分があります。かつては供給に時間がかかっていたこともありますが、『入荷まで数年』など都市伝説のような話もあります。
クラシックカー用タイヤを買うとなったら、まずミシュランを候補にして頂けるように定着させていきたいですね。それと、新たなユーザー獲得という意味では、フランス本社では捉えきれていない、日本市場の情報を提供していくことも我々の役割です。
グローバルでこのジャンルに最初に踏み込んだのは我々だと思います。オーナーズクラブからの要望で、研究所にある機械で少量を作ったということが始まりですし、元々ビジネスよりも文化的な貢献が第一にあります。10年、20年先に今のクルマがヤングタイマーとなり、やがてクラシックカーになっていくので、将来も文化を支えていきたいと思っています。
ミシュランには“モビリティの発展に貢献”という理念があります。古いクルマだから動けないのではなく、そういったクルマにも適切なタイヤを提供していくことが大切です」