交換作業や保守管理の不備が原因か
国交省は2019年12月に「大型車の車輪脱落事故防止対策に関する調査検討ワーキンググループ」を設置した。事故原因の究明と効果的な事故防止対策の検討を進めており、2020年10月16日には中間とりまとめを公表した。
それによると、車輪脱落事故は11年度の11件を底に増加傾向に転じている。佐橋整備課長は「ユーザーの方のこの事故に対する意識が依然として向上していないのではないか」としつつ、「なぜこの数年で増加しているのかは突き止められていないため、今後も事故調査を継続していきたい」と話す。なお、車輪脱落事故のほとんどがトラック車両によるもので、バス車両は年間1~3件程度だ。
中間とりまとめでは18年度の事故調査から、冬季や積雪地域、車輪脱着後1カ月以内に事故が集中している点のほか、事故は大型車ユーザーがタイヤ脱着作業を実施している場合に最も多く、左後輪の脱落が全体の9割を占めると指摘。さらに、事故の発生は増し締めの未実施やトルク管理不備、劣化・摩耗管理不備といった不適切なタイヤ交換作業、保守管理の不備が主な要因と推定された。
また、脱輪事故を起こしていないトラック事業者やバス事業者の管理状況を把握するため、20年にはアンケート調査を実施。事故を起こした事業者と比較したところ、事故発生事業者は自社でのタイヤ交換が多いのに対し、事故を起こしていない事業者は外注業者(タイヤ交換業者、整備工場)でのタイヤ交換が多いという。
ホイール・ボルト、ナットの劣化・摩耗状況の確認は、事故発生事業者の方が実施する割合が低かった。また、タイヤ交換作業時の規定トルクでの締め付けは、事故を起こしていない事業者および事故発生事業者のいずれも行っていない割合が多い。
さらに、増し締めの実施状況は事故を起こしていない事業者でも「実施しない」が約1割いたが、「実施する」が約3割、「緩みがあれば実施する」と回答した割合は5割程度だった。増し締め時には、事故を起こしていない事業者の方が規定トルクで締め付けを行っていた。
事故を起こしていない事業者での独自の事故防止対策を収集したところ、「タイヤ交換作業時の記録をとる」「ナットにマーカーを引いて点検の目安にする」という取り組みが多く見られたそうだ。
同省では、この中間とりまとめを受けて、関係業界の協力のもと昨年11月から今年2月末まで「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を展開している。