拡大する活躍の場 モビリティープラスの「True-Gシステム」

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カテゴリー: 事業戦略, 特集

 モビリティープラス(京都市山科区)が展開している車載電源システム「True-G」や急速充電車「Q電丸」の活躍の場が広がっている。タイヤサービスカーはもちろんのこと、自動車メーカーの開発現場、さらに高速道路では大雪が発生した際の切り札としても導入が始まった。その背景には荷室を自由に活用しつつエンジンを停止して作業が行えることのメリットが認知されてきたことに加えて、急速に拡大するEV(電気自動車)への対応がある。様々な産業でサステナビリティが重要になる中、「True-G」がもたらす価値はより大きくなっていきそうだ。

 モビリティープラスの「True-G」は、三輪タイヤとして長年にわたってタイヤ販売店を運営してきた三輪智信社長が自社の出張サービスカー向けに開発したことが出発点となる。

「True-Gハイブリッド・システム」を搭載したサービスカー
「True-Gハイブリッド・システム」を搭載したサービスカー

 サービスカーにはコンプレッサーやチェンジャー、バランサーといった機材を、限られた荷台スペースに効率よく配置することが求められる。ただ、小型トラックなどでは肝心のタイヤを積載するためのスペースが小さくなってしまうことが課題だった。さらに、エンジン式発電機の場合、どうしても騒音や振動が発生し、排気ガスが周辺に悪影響を与えることもあった。

 これらの課題を解決したのが「True-G」だ。従来の発動発電機と比較して、小型・軽量でありながら同等以上の発電量が得られるシステムとなっている。

 三輪社長は「発電用エンジンを別途搭載しないため、通常の発動発電機よりも大幅な小型化と省スペース化が可能になる。発電設備はエンジンルームの架台下や荷室仕切板などに分散配置でき、荷室はタイヤを積むという本来の用途に活用できる」とそのメリットを話す。

 そして、車両のエンジンは停止した状態で作業を進めることができるのも大きな魅力だ。システムを搭載していれば、サービスカーが走行中に発電した電気をリチウムイオンバッテリーに蓄電し、エンジンを止めたままコンプレッサーやチェンジャーへ給電することが可能となる。作業終了後、次の現場へ向かう走行中に再び充電を行うのが一連の流れだ。

三輪社長(左)と藤原執行役員
三輪社長(左)と藤原執行役員

 藤原愼司執行役員によると「40分の走行で蓄電容量の約8割が充電できる。1回目の現場でバッテリーを使い果たしたとしてもリチウムイオン電池なら2つ目の現場までに準備が整う」と説明する。

 三輪社長は「SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっている中、作業中に騒音や排気ガスを出してしまうことが本当に良いのか――。昨今は運送会社でも荷物を降ろす際にエンジンを止めている。タイヤ販売店で発電機を動かしながら、というやり方はいつまでも続かないのでは」と疑問を呈する。

 実際、サービスカーでの作業は早朝や夜間、住宅地近隣など時間や場所は様々だ。三輪タイヤで導入した当時、社員からは「作業中に音と排気ガスを発生させないことは心理面でも身体にとっても非常に楽になる」と評判は上々だった。また、同社のサービスカーを導入したタイヤ販売店からも一様に「本当に良いシステムになっている」と高く評価されている。

 タイヤサービスカーの開発から製造、販売までを担うモビリティープラスの設立は2005年。2009年に「True-G発電システム」の特許を取得し、2015年にはリチウムイオン電池併用発電システム「True-Gハイブリッド・システム」でも特許を取得した。また、2012年には移動式EV急速充電車「Q電丸」を発表している。

「True-Gハイブリッド・システム」の発電機本体
「True-Gハイブリッド・システム」の発電機本体

 「Q電丸」は開発当時、誕生して間もなかったEVが路上で電欠した際にレスキューとしての役割を期待したものだったが、当初は狙い通りにいかなかったようだ。国内では通常時にバッテリー残量がゼロになって動けなくなるEVは少なく、また急速充電は無料で行うものというユーザー側の意識もあった。藤原執行役員は「自動車メーカーへ提案したこともあるが、相手にしてもらえなかった」と振り返る。

 その後、イベント会場で展示するなど地道な提案活動を続けてきたが、ここにきて一転、数年前から急激に注目度が高まっているという。

 近年のEVシフトがあるのはもちろんのこと、やはりアイドリングストップで作業が行えることの利点が認知されてきたことも背景にある。環境対応が強く求められる今、「True-Gシステム」が時代にミートした格好だ。

 レンタルやリースの需要も多く、東京五輪の聖火ランナー追走車や移動式金融窓口車、さらにはレントゲンバス、地震体験学習車など様々なユーザーから問い合わせがあり、実際に多くのシーンで使用されている。また、自動車メーカーが新型EVを開発する際、テストは山の中など充電設備が整っていない場所で行われることもあり、そういった場所でも「Q電丸」が活躍している。

 昨年冬にはNEXCO中日本への導入も開始した。大雪で通行止めとなり長時間同じ場所に滞留せざるを得ないような時、EVはバッテリーが無くなり動けなくなってしまうことが懸念される。NEXCOではこうした際に急速充電車で駆けつけて救助することが可能になるとの考えから配備を決めた。

 三輪社長は「これらは今後広がっていく事業領域となる」と期待感を示し、「タイヤサービスカーに急速充電機能を付けたらと考えて開発した技術がEV普及へのお手伝いになっている」と確かな手応えを感じている。

 なお、同社のシステムはEVから回収したリチウムイオン電池をリサイクルして自社開発したプログラムで制御するため、バッテリー自体のコストは新品の半分以下となる。リサイクルといっても元々の耐久性、信頼性は非常に高いことから10年前の「Q電丸」が今も現役で使用できるほどだ。

オートバックスに導入した車両
オートバックスに導入した車両

 ユーザーの要望に応じて特装車・充電システム・リチウムイオン電池をワンストップで提案できる会社はほかになく、事業開始から10年以上が経過した今でもフォロワーは見当たらないという。まさしくオンリーワンの技術だ。

 「我々が長年取り組んできたシステムが様々な企業に採用して頂けるようになったことは誇りに思う」――三輪社長は今の想いをこう口にし、その上で「やはり本家本元のタイヤ業界で多く使って頂きたい」と力を込める。

 今年2月には北海道帯広市にあるオートバックスへ納入も行った。店舗側は「これからは出張サービスも必要で、災害時にはこのクルマからの電力供給で店舗運営ができる」とBCP(事業継続計画)の観点からも有効だと評価したようだ。

 少しでも事業を通じて環境に貢献したいという想い、あるいは既存のビジネスの枠から一歩を踏み出したい企業にとって「True-Gシステム」は大きな価値を生み出していくに違いない。


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