<TOPインタビュー>トーヨータイヤジャパン 山邊憲一社長

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カテゴリー: インタビュー, 特集

 重点商品の価値をお伝えしていく

 OPEN COUNTRYの成長を実感

 

 経営基盤強化を推進 イメージ訴求にも力

 

 ――23年から24年にかけて国内需要は全般的に厳しい状況で推移したが。

 

山邊憲一社長
山邊憲一社長

 昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行して以降、景気は緩やかに回復してきました。しかし、23年の国内タイヤ市場は需要の減少に加え、暖冬の影響から冬用タイヤの販売が伸び悩んだこともあり、日本自動車タイヤ協会の統計を見ても、全体として低位で推移しました。

 当社ではエネルギー費や物流費、原材料価格の高騰を見極め、販売価格の値上げを2度実施しました。また、強みであるOPEN COUNTRY(オープンカントリー)シリーズの積極投入やフラッグシップブランドであるPROXES(プロクセス)シリーズ新商品の販売に注力した結果、売上げは前年度並みを確保することができました。しかし、物価高による消費低迷や円安の影響、異常気象など、われわれを取り巻く社会情勢も厳しさを増しています。

 

 TOYO TIREグループでは、中期経営計画「中計 ’21」の方針として、付加価値の高い商品群を重点商品として位置づけ、販売本数(量)を追いかけるのではなく、質の高い高付加価値商品をお届けしていくという姿勢を徹底しています。

 同時に、国内では営業網や物流拠点の統廃合、SCMの再編、DXの推進など、仕事の構造、しくみを抜本的に変革していく経営基盤の強化を推し進めています。

 23年1月に大規模な販売体制の改正を行い、営業所の数は従来の半分以下となりました。工場からの直送や定時配送など物流の効率化、コンタクトセンターを活用した受発注の効率化も進めています。営業マンの直行直帰、ロードサービスカーやデジタルデバイスを活用した営業支援など、働き方も改革を続けています。都市圏と地方ではビジネス環境が大きく異なるため、一律的に各施策を断行するのはむずかしい面もあり、日々、課題を洗い出し、改善を積み重ねていきます。

 

 こうした事業変革の一方、プロモーションやブランディングといったイメージ訴求にも力を入れています。世界最大級のカスタムカーショーである「東京オートサロン」への出展をはじめ、TOYO TIRESファンミーティングといった独自イベントの開催、SNSを使ったブランド認知度向上に対する仕掛けづくりをTOYO TIREグループ全体で取り組んでいます。

 本年元日にはサッカー日本代表国際親善試合を「TOYO TIRES CUP2024」として特別協賛し、多くの反響をいただきました。このような活動を通じて、TOYO TIRESブランドへの認知が着実に浸透してきていることを実感しています。

 

 

 市場認知度高まるTOYO TIRE

 

 ――24年第2四半期以降は、どのような事業の展望を描くのか。

 

低燃費コンフォートタイヤ「PROXES CF3」
低燃費コンフォートタイヤ「PROXES CF3」

 需要環境は、しばらく現状の厳しい状況が続くのではないでしょうか。春先まで降雪があったことから、夏用タイヤへの交換需要が遅れました。1月から3月まで市場は動きませんでしたが、4月、5月に入って一転、活発化してきました。2月、3月から春商戦に備えていたので、現在はその需要の刈り取りを行っているところです。

 また、1月からPROXES(プロクセス)シリーズの新商品、低燃費コンフォートタイヤ「PROXES CF3」の発売を開始しました。これによって、PROXESシリーズの商品が揃いました。お客様にはこれまで以上にPROXESの商品力、性能の高さをしっかりと訴求し、一層の販売拡大につなげていきたいと考えています。

 

 気候は今から夏本番ですが、6月以降は冬タイヤ商戦の準備と生産財タイヤへの取り組みが重要なポイントとなってきます。「24年問題」で中小の物流企業が厳しい環境に立たされるなか、当社がお役に立てる支援策を検討し、ご提案していきたいと思っています。

 

 ――OPEN COUNTRYブランドの認知度は国内でも向上したと実感しているか。

 

OPEN COUNTRY
OPEN COUNTRY

 日本でのOPEN COUNTRYの本格的な販売は、17年頃からスタートしました。その当時と比べると取扱量は何倍にも増えています。やみくもに量を追うような展開はしません。OPEN COUNTRYの価値をお客様にお伝えし、共感してくださるかたがたへお届けしていく考えです。

 最近では、OPEN COUNTRYを装着した女性ユーザー向けのイベントである「#オプカン女子会」がSNSで話題になり、イベント会場は大変な盛り上がりを見せています。これまでは考えられなかった光景ですが、競合他社とは一線を画した独自の訴求を続けていく考えです。

 OPEN COUNTRYをはじめ、TOYO TIREの商品が市場で認知されるようになったことで、当社のセールスマンのモチベーションがあがり、それにともない販売スキルの向上にもつながっていると実感しています。

 TOYO TIREが指名買いされるブランドへ成長したことで、セールスマンはプライドを持って販売することができるようになってきています。

 

 

 ――重点商品の販売に注力してきたことが、人材を育て、タイヤ販売店の収益向上につながっているようだ。

 

 TOYO TIREグループ全体の方針と同じく、国内でも重点商品の販売に力を注いでいます。当社から販売店の皆様に、重点商品が持つ価値をきちんとお伝えして共感していただく。そうすることで、販売店の皆様がお客様に販売していただくときに、ご納得いただけるようになると思いますので、24年度も販売店の皆様との双方向コミュニケーションを継続していきたいと思います。

 

 

 「24時間問題」はタイヤ基点の解決策を

 

 ――「24時間問題」への対応として提案するプランは。

 

 本年は、「ドライバーの労働時間制限」が4月から適用されるなど物流業界にとって大きな変化の年となります。

 人手不足が深刻化するなか、物流業界のお客様からは、「タイヤのメインテナンスにかかる手間を少なくしたい」という声を多く聞くようになりました。タイヤのメインテナンスは、はき替えや空気圧のチェック・補充、パンクといったアクシデント対応など、大変手間がかかります。この頻度を下げることができれば、人材不足の物流業界に貢献できるのではないかと考えています。

 具体的には、ロングライフを追求した省メインテナンスタイヤや低燃費タイヤを市場で展開するとともに、「定額プラン」などの新しいビジネススタイルのご提案も行っています。

 また、タイヤの残溝を管理し、そのデータをもとに摩耗の予測を行い、タイヤの交換時期をお知らせするという摩耗診断をサービスとして実用化を進めています。タイヤの空気圧や内部温度の変化を常時モニタリングするTPMSとデバイスとを連携させ管理する実証実験を行っており、24年中にテスト販売を開始する予定です。

 省メインテナンス性や燃費性を高めたタイヤと、定額プランやモニタリング、摩耗診断などを組み合わせ、タイヤを基点にトータルで課題解決への提案を行っています。

 

 

 体系的な研修が好循環 技能を評価する風土へ

 

 ――大型車車輪脱落防止を図るために各種施策に意欲的に取り組まれているが。

 

 大型車用タイヤの作業手順の標準化や、サービスマンの知識と技能スキル向上を目的に毎年、社内で作業コンテストを行っています。全国の各拠点では大会に向けて、定期的に座学と実地の技能研修を行われるなど、大変な盛り上がりを見せており、参加するメンバーのレベルも年々上がっています。

 この結果、TOYO TIRE独自の認定制度であるサービスマスターやサービスエキスパートを多く輩出することができました。そういう熟練の技術者がインストラクターとなって後輩の研修にあたるなど、社内で良い循環が生まれ、組織のなかで体系的に研修教育が確立されたと考えます。

 このような技能の向上は結果として報酬にも反映されますので、仕事に対するモチベーションにもつながっています。また、技能をしっかり評価する風土が、会社とのエンゲージメントにも深く結びついています。

 

 

 ――TOYO TIREブランドを販売するタイヤ販売店の皆様に、山邊社長からひとこと、メッセージを。

 

 24年も厳しい状況が続いていますが、このような厳しい時代だからこそ、企業には変化していくことが求められます。タイヤ販売店の皆様と力を合わせて、TOYO TIRESファンをつくっていきたいと考えています。お客様のお役に立てるよう皆様と連携して今後も取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。


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