タイヤワールド館ベスト 安井仁志社長  “ワクワク”“ドキドキ”のある店づくりを =前編=

シェア:
カテゴリー: インタビュー, 特集
タイヤワールド館ベスト安井仁志社長
タイヤワールド館ベスト安井仁志社長

 宮城県仙台市内に本社を置くタイヤワールド館ベスト。1970年に創業し、15年からはプロトグループの一員として新体制をスタートした。来年は創業55周年を迎える。店舗でのタイヤ販売をはじめFC事業、EC事業を確立し、業容の拡大を続ける。コロナ禍を経て、国内市販用タイヤ市場は質・量の面で大きく変容した。そのなかで同社は次々に新しい取り組みを打ち出す。安井仁志社長に聞いた。

 

 

 コロナ禍で変わった店舗での対面販売

 

 ―コロナ禍はタイヤ販売店の対面販売に大きな影響を与えた。

 

 業界全体では、四輪タイヤのアフターマーケットはコロナ前が6000万本に対して、昨年は4800万本と2割ほど減少した。成熟産業でもあり、今後市場が大きく成長することは考えにくい。

 このような環境のなかで、当社はコロナ前に対して前期(24年3月期)は約40%の増収となった。店舗事業の売上は微減、利益は7%減となったが、ECなどのインターネット事業がBtoB、BtoCともに伸びて、店舗での減少分を補った。ネットを媒介にした事業は今後、業界でも主流になっていくだろう。

 当社では外部のECプラットフォームを活用するとともに、コロナ前から自社運営のサイトもしっかりと準備してきた。コロナ前後で顕在化した購買層の変化にうまく合わせることができた。

 

 ―24年1~6月の夏商戦を振り返っての業績はどうか。

 

 JATMAの統計では、前年比▲7~8%だったが、当社は数量ベースで6%、金額ベースで11%の増加となった。この伸長にはECが大きく寄与したが、その一方で店舗販売は前年並みだった。タイヤの値上がりで、ユーザーの購買意欲が薄らいでいる。仕入れ原価も上がっていることは、売上に比して利益が追いつかない要因となっている。

 

 ストロングポイントを伸ばす

 

 ―昨今、タイヤ販売店は経営に苦慮するケースも多い。増収増益を確保してきた秘訣は。

 

 当社事業で柱の一つに成長したのは預かりメンテナンスだ。預かりメンテナンスは利益率が高い。

 当社は近隣のカーディーラー各社と良好な関係を築いており、タイヤをお預かりしている。タイヤのレポートを提出して、交換が必要な場合には当社のタイヤをご購入いただいている。

 預かり量は年間3~5%で増えている。ドライバーの高齢化や女性ドライバーの増加、集合住宅が増えるなど住居でタイヤを保管するスペースが確保できなくなったことも追い風だ。こういった預かりは、タイヤ販売につながっている。

 2019年から稼働する本社物流センターの稼働率は100%だ。仙台市泉区にある物販用倉庫の一部を預かりタイヤを置いて拡大する需要に対応している。

 

 ―宮城県以外での預かりメンテナンスの展開は。

 

 6年前に名古屋に東海営業所を開設し、昨年春に大阪に関西営業所を開設した。営業所単体でも盤石な財務基盤を築くためのビジネスモデルが必要と考えているが、業者向けの販売のみでは薄利多売だ。そこで収益の柱のひとつに育てるため、預かりメンテナンスを関西や東海でもスタートさせる計画だ。

 関西では来シーズンから始める。最初は試験的にクルマの販売代理店からお預かりする。保管スペースも安価に確保することができる見通しだ。

 仙台では夏冬でタイヤを交換するユーザーは90%以上にのぼるが、西日本でも同じビジネスモデルが可能かを試したい。関西圏のなかでも降雪量が多い京都など大阪以北での展開を考えている。

 預かりメンテナンスは当社のストロングポイントだ。販売するタイヤで独自性を発揮するのはむずかしい。ネットの口コミ評価も競争が激しく流動的だ。当社が普遍的に強みを発揮できるのは、タイヤの預かりとメンテナンスをハンドメイドで行えることだろう。この強みを全国で生かしていきたい。

 

 ―物流センターの開設も相次ぐ。

 

 おととしに兵庫県姫路市、昨年に千葉県柏市に物流倉庫を確保した。ねらいは全国への販売で物流のリードタイムを短縮することだ。これまではすべて仙台から出荷していたが、「2024年問題」が影響し翌日配送できるエリアが狭まっている。関西圏や千葉に物流拠点を構えることで、ユーザーにタイムリーに配送できる体制を整え、物流品質を落とさないことがねらいの一つだ。

 また、配送距離を短くすることで配送コストを抑えられる。預かりビジネスの保管スペースとしての活用も期待している。(後編へつづく)


[PR]

[PR]

【関連記事】