多彩なニーズに合ったサービスの提供を =後編=
(前編からのつづき)
24年問題・運転手不足が需要の背景に
――コロナ禍の影響でサービスカーの市場構造はどう変わったか。
木崎 コロナ禍で、事業者の車両整備だけでなく一般ドライバーからのニーズが増加した印象だ。
前中 店舗に出向かなくともタイヤ交換や修理のサービスを受けたいというニーズは以前から高かった。コロナ禍では一般ユーザーがサービスカーのメリットを得られやすい環境になった。
物流2024年問題によりドライバーの労働時間管理は重要になっていることもあり、サービスを受ける事業者側(主に運送業者)のメリットは非常に大きい。そのメリットはサービスを提供する店にとって大きな付加価値であり、武器になる。
一般ユーザーへのサービス提供の仕方も変わってきた。来店予約制にすることで待ち時間が減るなどメリットがある。またサービスカーに自宅まで来てほしい、タイヤが路上でバーストしてしまったが応急処置だけでなくタイヤ交換までしてほしい、というケースもある。そういった需要は今後も続く。
ジェンダーレス・エイジレスに対応
――一般車両に搭載することが可能な簡易型ユニット「EPU-01」について
木崎 好調な売れ行きで、高い評価をいただいている。既存の車両に搭載することで、簡易型ではあるが出張サービスカーと同様の機能を持つことができる。今後も継続して販売していく。ご要望に応じて搭載機器を多彩に組み合わせることができるので、さまざまなニーズへの対応が可能であるのもメリットの一つだ。
杉村 既存車両を使うことで、サービス作業のありかたを見直したといった声もいただいた。ユニットに搭載した発電機など機器単体の引き合いも増えている。
――タイヤ整備の現場にも女性やシニア世代が増えているが、環境をどのように整える必要があると考えるか。
木崎 女性やシニアの作業者が増えれば、サービスカーの搭載機材の軽量化など工夫しなければならない。もっとも、女性やシニア向けということではなくても、現在でも工具類の電動化など機器類の改良や機能アップによる軽労化・省力化と作業の効率化は確実に進んでいる。また、車両には運転支援機能が増えており、性別・年齢に関係なくだれもが安全に車両を運転できるようなりつつある。タイヤ整備の作業現場でもそれは同様だ。
SDGsとCASE対応は喫緊の課題
――今後のサービスカーは。
木崎 コネクテッド機能が進化し、たとえばGPSで走行状態や作業状態が把握できるようになれば、さらに効率良いサービスの提供が可能になるのではないか。また、特許を取得しているジャッキの昇降装置も車両によっては搭載可能だ。
工具類の電動化は今後のトレンドだ。エアツール類はほぼ電動化していくのではないかとみている。出張作業の仕方も変わっていくだろう。
杉村 「MTSⅡ」にはインバーターも搭載した。今後は総合的なフリートサービスやソリューションビジネスとの連携も考えている。タブレットからデータをクラウドにアップして現場で使うときにも、発動発電機を通じての電源確保ではなく、サービスカーのインバーターを活用することを視野に入れると、これまで現場では対応がむずかしかったサービスのご提供も可能になるのではないか。ニーズに合わせて仕様選定していく。法規制の変更にも迅速に対応し、最新技術を取り込んでいく。エネルギー源もシフトしていかなければならない。例えば発電パネルの搭載はアイデアの一つ。再生可能エネルギーを活用し、サービスカー本体の自給自足性を高めていくのが今後の課題のひとつだ。さまざまな業態との連携を想定し、環境への配慮と社会課題に対応していきたい。
前中 サービスカーはさまざまに制約があるなかでどれだけ良いサービスが提供できるかという点が重要だ。われわれはその点を工夫し、開発に取り組んでいる。従来からの作業中の安全、走行中の安全という「ダブルの安全性」を追求しつつ、社会からの要請に対応する仕様を考え、さまざまな可能性を検討していく。