センシングコアの価値と可能性  定本祐氏(住友ゴム工業オートモーティブシステム事業部企画部主査)

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カテゴリー: インタビュー, 特集

 近未来のモビリティ社会実現へ(前後2回/後編)

 

(前編からの続き)

 ——これからのロードマップをどう描いているのか。そのマイルストーンを。

 

定本祐氏
定本祐氏

 「センシングコアの機能拡張に応じて、ビジネスの領域を拡大していく考えです。当社オートモーティブシステム事業部のなかで、センシングコアの開発に携わる者がさまざまなアイデアを考えその具現化に取り組んでおりますが、現時点で具体的な内容を申し上げられません。ステップバイステップで商品化していきますが、一つ、プランとして持っているのはセンシングコアの後付けです。新車装着にこだわらず、アフターマーケットでビジネスを行うということを視野に入れています。

 たとえば、23年に静岡県の富士スピードウェイでレースでのセンシングコア実証実験を公開しました。軽自動車の耐久レースに参加した車両にセンシングコアを搭載し、タイヤの路面への接地状態をリアルタイムで可視化するという実験です。ドライバーとチームスタッフがセンシングコアで解析した情報を共有することで、レース戦略が大きく向上しました。

 24年のドイツ・ニュルブルクリンク24時間耐久レースでも2台のポルシェにセンシングコアを搭載し、好成績を収めることに貢献しました。

 このようにモータースポーツの分野でセンシングコアが役割を果たすことできるのではないか。また、モータースポーツは究極の実験場と言われており、そこで搭載されることで商品としての性能や耐久性が評価されます。センシングコアに対するニーズが後付けの商品として形に表れてくるのではないかと考えます。

 ただ、後付けに関しては汎用性が問われます。そこで当社だけではなく、さまざまな企業とタイアップやコラボレーションを行いながら、共同で商品の企画や開発に取り組んでいく必要があると想定しています。

 

 日本市場はTPMSの新車搭載がまだ少ないこともありますので、自動運転技術の観点から導入が進んでいくのではないかとみています。そこでセンシングコアの特長、メリットをアピールし、ビジネス化したいと考えます。

 もう一つの大きなマーケットである中国市場に関しては、新車メーカーの数が非常に多く、また自動運転に関わる企業もとても多い。協働するパートナーをどう選定し、商品の開発スピードをいかに上げるか。そこに低コスト化を加え、これらの課題をクリアしていく必要があると思います」

 

 クルマの安心・安全を確保したい

 

 ——センシングコアの競争優位性、センシングコア事業の社会的価値について、改めて〈思い〉をうかがいたい。

 

CES2024「センシングコア」ブースのパース
CES2024「センシングコア」ブースのパース

 「センシングコアの起点はDWSであり、そのベースはタイヤです。タイヤメーカーである住友ゴムが長年にわたり培ってきた知見ですので、その自信は揺るぎありません。センシングコアの機能の拡張についても、タイヤメーカーだから社会課題の解決としてご提案できることであり、お客様の安心と安全をカバーできるものと思っています。

 センシングコアはCASEと親和性がとても高い。たとえば自動運転技術を搭載したクルマが増えれば、その運行管理は運転席ではなく、クルマから離れたところからコントロールされることとなります。そういう状況で、クルマに何らかの故障が起きる前にセンシングコアが予知し、そのクルマにアラートをかけることでトラブルを未然に防ぐというシーンが現実のものとなってきます。

 タイヤを含め車両の部品の故障を予知することができれば、あらかじめ交換するための部品を用意することにより、クルマを適切に管理することができます。定時運行をトラブルによりストップすることはありませんし、クルマも最適な走行ライフを送ることができます。センシングコアは自動運転のその先を見すえた取り組みへとつながっています。

 

 住友ゴムが持つタイヤ生産・販売の知識をフルに生かして、お客様が乗るクルマの安心と安全を確保したい、という考えがセンシングコアの基礎にあります。安心と安全を追い求めた先に自動運転があり、その近未来のモビリティ社会の実現に、住友ゴムはセンシングコアで貢献したいと考えます」


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