中古タイヤ輸出 2025年の展望  朝日洋行株式会社

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カテゴリー: 事業戦略, 特集

 アジアからの流入で北米・南米が低調推移

 25年は回復見込み、アフリカ輸出に活路

 

 24年の中古タイヤ輸出は逆風に見舞われたようだ。最大のネックとなったのは北米・南米需要の停滞だ。安価なタイヤの流入によって、需要が奪われた格好だ。さらに海上運賃の値上がりや国内での調達難も足かせとなった。25年は低調からの反動で回復を見込む。ただ市況の風向きに任せるのではなく、より強固な基盤を築こうと独自の販路開拓を目指す動きもでている。

 

 24年需要は停滞気味

 廉価品が市場に追い撃ち

 

湯川宣夫社長(左)と磯川泰祐海外事業部長
湯川宣夫社長(左)と磯川泰祐海外事業部長

 2023年は新型コロナウイルスからの経済回復に湧いた。日本でも5類移行により経済活動が本格的に再開された。

 中古タイヤの輸出事情はどうなのか。財務省貿易統計をみると、21年は金額ベースで累計96億円となり、17年以来4年ぶりに100億円割れとなった。しかし、22年に129億円をつけると、23年には160億円と、00年以降で最高の上げ幅をつけた。24年も11月までで148億円となり、金額だけをみれば好調を維持しているようだ。

 それでも「低調だった」と評するのは台タイヤや中古タイヤ輸出を事業とする老舗の貿易商社、朝日洋行(本社・東京都豊島区)の湯川宣夫社長だ。実は24年は、複数のネガティブ要因が顕在化した「内憂外患」の1年だったと指摘する。

 最大のマイナスは北米需要の停滞。このエリアでは特にトラック・バス用の幅275ミリメートルの中古タイヤが「入れ食い状態」と表現されるほどに需要があった。しかし、夏場過ぎあたりから停滞し始めたという。

 湯川社長によれば「ベトナムやインド、カナダ、中継地のオーストラリアから安価なタイヤが大量に流入してきた」という。さらに「あるリトレッダーの話」として、中国メーカーのタイヤがベトナムやカンボジアで製造されて北米に輸出されていると言われる。このようなことが、日本国内の中古タイヤ輸出事業者にとってもネガティブ要因となって表れた。

 米国のリトレッドタイヤ事業者の動きにも変化がみられるという。これまで日本から多くの中古タイヤを仕入れていた米独立系大手の事業者が、「24年後半から日本からタイヤを輸入する動きが見られなくなった」。より安価なタイヤに切り替えた可能性もあるが、湯川社長はこうした動きについて「構造変化が起きているのかもしれない」と注視する。

 不安定な国際情勢を背景とした海上運賃の値上がりも足かせだ。23年10月にパレスチナ・ハマスによってイスラエルが襲撃され、イスラエルがこれに報復でガザ地区に侵攻。中東情勢は急速に悪化した。イスラム武装組織がさらなる報復として紅海を航行する商用船を襲撃する事態が繰り返された。

 これにより、船は迂回を余儀なくされ運賃が上昇。さらに同時期にパナマ運河では水位低下に見舞われ、こちらでも迂回を余儀なくされた。中古タイヤ輸出業者にとって最大コストである海上運賃の高騰は死活問題になりかねない。

 調達環境もかんばしくない。タイヤ各社は原材料の値上がりを理由にタイヤ価格を軒並み値上げした。それによりこれまで有価で調達できていたものが、カーカスの状態が限界になるまで使用され廃棄になるケースが増えた。バスやトラック事業者も従来、走行距離を基準にタイヤを交換していたが、最近では廃棄となるまで履きつぶすケースが増えている。

 

 南米にも「中国の影」

 輸出先開拓で活路拓く

 

 安価なタイヤの流入による市況の悪化は北米に限らない。南米でも同じ状況に陥りつつある。

 日本の中古タイヤは韓国経由で南米に輸出されることが多い。品質の良さから南米ユーザーからの支持が厚く、韓国タイヤメーカーのものよりも日本製が好まれてきたという背景がある。しかし24年は「例年の7割ほど」にとどまった。

 そこにみえ隠れするのは、「中国の影」だ。中国の新品タイヤが南米に輸出されるようになり、韓国から南米への輸出が影響を受けているという。

 南米から振り替える先になっているのが、マレーシアだ。この国は輸出の経由地にもなるが、国内のマーケットの規模も大きいことから有力な輸出先となる。それでも需要は有限であり、マレーシアに一本足で頼ることはできない。

 そこで朝日洋行が活路を拓く戦略として取り組むのが、中東やアフリカやモンゴルの事業者との関係構築だ。これらの国への輸出は、現地バイヤーが来日し検品などを自分でこなしてしまっており、国内商社にとっては実入りが少ないのが実情だ。

 朝日洋行はこのような地域に商社として食い込もうと取り組みを強める。なかでも今、熱いまなざしを向けるのがUAEドバイ。ここで24年12月にクルマ関係の展示会が開催された。

 ドバイはアラビア半島の沿岸に位置し、ペルシャ湾をはさんでイランと隣接する。「アフリカ市場への入口」とも評される地域だ。湯川社長によれば、ドバイ周辺にはタイヤ事業者が軒を連ねており、そこにはアフリカの業者が数多く往来しているという。

 北米や南米の需要が不振となるなかで、さらなる成長のために欠かせないのが新たな販路の開拓。ドバイの展示会には多くのアフリカ系の業者が来場することを見込み、取引のある韓国企業の出展スペースの一部を使用して展示ブースを出展した。

 「当社としては従来の輸出先を維持するとともに、新しい販路を開拓しないといけない」と湯川社長は強調する。現地の業者が来日して自前でタイヤ買い付けをこなすなかに、商社として食い込む機会をうかがう。

 25年は低調だった24年の反動を期待し回復基調を見込む。輸出が減ったことから現地は在庫不足になる可能性が高いとも指摘される。実際、24年後半から従来のピークを過ぎても注文が入るようになっているそうだ。朝日洋行はこの追い風に乗りながら、新エリアへの販路開拓を模索し、ビジネスの地盤をより強固なものにしていく構えだ。

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