横浜ゴムは2018年から来年にかけて生産財タイヤのラインアップを拡充する。3月に国内のトラック・バス用タイヤの基幹商品としては10年ぶりとなる「710R」を発売したのを皮切りに、海外市場を含めて今後2、3年の間に従来の2倍程度の商品を投入していく計画だ。同社は2月に公表した2020年までの中期経営計画「GD2020」の柱のひとつに、タイヤ生産財事業の強化を掲げており、市場のニーズへ迅速に対応した商品展開を加速させることで、将来の成長に繋げていく。
10年ぶりの大型商品「710R」発表
横浜ゴムは今年2月に2018年から2020年までの3カ年を対象にした新たな中期経営計画を発表した。経営基盤を強化することで、2020年代の飛躍を目指しており、その柱のひとつがタイヤ生産財事業の強化となる。
2月28日に都内で開催した新商品発表会で、山石昌孝社長は生産財事業の方針について、「2016年に買収したアライアンスタイヤグループ、2017年に買収した愛知タイヤ工業、そして横浜ゴムの建機車両用タイヤなど、オフハイウェイタイヤを成長ドライバーとして事業ポートフォリオを拡充させる。またトラック・バス用タイヤでは米ミシシッピ工場を活用して北米市場で拡販を図る」と述べた。
一方で、「商品面においては、市場ニーズを拾いあげて、お客様にご満足頂ける商品展開を行っていく」と、今後の展望を話した。
今回、その第1弾商品として国内向けに上市するオールシーズンタイヤ「710R」は、ライフ性能を大幅に向上させることで輸送事業者が求める経済性を高めつつ、多くのドライバーが不安に感じる空荷時の安全性を改善したのが特徴だ。
技術面では、新たに専用パターンを開発したほか、ゴムには耐摩耗性能に優れるポリマーとウェット性能に貢献するシリカを配合するなど、トレッドからプロファイル、コンパウンドまであらゆる面で見直しを図った。その結果、従来品(ZEN 701ZE)と比較して耐摩耗性能を約20%向上しつつ、空荷でウェット路面を発進する際のスリップ率を半減させている。
「710R」の発売サイズは全10サイズで、市場動向を見ながら今後のサイズ拡大を検討していく。同社では2018年にオフハイウェイタイヤを含めた市販用の生産財タイヤ全体で、国内の販売数量を前年比5%増まで引き上げる方針だ。
さらに、北米市場などで販売を積極化している大型トラック向けワイドシングルタイヤの国内への本格導入も早い段階での実現を目指す。
シングルタイヤは従来1軸で片側2本必要だったタイヤを1本にするもの。軽量化による燃費向上や積載量の増加など、使用環境によってはユーザーへのメリットも少なくないが、国内で販売しているメーカーは限られている。
横浜ゴムでは現在、一部の輸送事業者で試験運用を実施している段階だが、「スポットではなく“面”でサポートする必要がある」(同社)ため、新車装着時からアフターへの対応も含めて体制が整いしだい、投入に踏み切る構えだ。