ブリヂストンは6月25日に都内で開かれた内閣府などと進める研究開発推進プログラム「ImPACT」(インパクト)の報告会で、低燃費性と高破壊強度を両立したゴム複合体を発表した。
今回開発したゴムは、従来技術による低燃費ゴムと比べて強度が約5倍で、タイヤの燃費特性に寄与する材料物性は15%向上した。同社では2020年代前半の実用化を目指すほか、防振ゴムなどタイヤ以外の製品への活用も検討している。
「ImPACT」では、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導し、様々な分野の研究開発が行われている。その中でブリヂストンは、薄くても破れず、しなやかなポリマーを開発するプログラムに参加し、タイヤの薄ゲージ化に取り組んできた。
同社は、少ないゴム使用量でもタイヤの耐久性を確保するために、ゴムの様々な破壊現象の基本となる「き裂(亀裂)の進展」に着目。さらに、北海道大学などの協力を得て高強度ゴムを具現化した。
開発のポイントは、特殊に分子設計したネットワーク成分を汎用ゴムに混ぜ、ゴムの中に網の目のようなネットワーク構造を実現したこと。亀裂が発生しても、ネットワークが壊れることでエネルギーを逃し、ゴム全体としての強度を上げることに成功した。同社中央研究所の角田克彦フェローは、「タイヤを薄くできれば使用する原材料の量が減り、車両の燃費特性にも効果が期待される。産業廃棄物の量も減るので、ライフサイクル全体で環境に有効なものとなる」と述べた。
現在は、ゴムのネットワーク構造を実現するために、混合から加硫までの工程を最適化することが課題となっているが、実用化すればタイヤのゴム量を3~4割削減することが可能だという。
また、ブリヂストンが参加するプログラムでは、高強度ゴムのほかにも様々な研究が進められており、住友化学は車両の前面窓などに使用できる透明樹脂を発表した。
なお同プログラムでは、参加企業の研究成果を結集したコンセプトカーの製作を進めており、9月に神戸市で開催される電気自動車の展示会で披露する予定。