米中で相手国からの輸入品に対する関税上乗せの応酬が続いている。米政府は8月23日に160億ドル(約1兆8000億円)相当の中国製品に25%の追加関税を発動、対中関税の規模は7月の発動分と合わせて500億ドル相当となった。
中国政府も同規模の報復措置を講じるなど摩擦が過熱する中、米国は対象品目リストにタイヤなどのゴム製品を含む第3弾の追加関税を検討しているもようで、今後の動向に注目が集まる。
こうした中、国内タイヤメーカーには、現時点で影響は少ないものと見られる。
住友ゴム工業は、「中国製タイヤの輸入はなく影響はない。原材料は一部中国から輸入しているが対象品目が限られており、コストに与える影響は軽微」という。
また東洋ゴム工業は、北米市場向けトラックバス用タイヤについて、「中国での生産の一部を国内の桑名工場(三重県)に移管し、国内市場向けトラック・バス用タイヤの一部を中国工場でまかなう体制へのシフトも可能で、現時点で大きな影響を受けることはない」としている。
変わる中国メーカーの戦略
一方、中国のタイヤメーカーは貿易摩擦への対応策として生産の海外シフトや、中国国内での販売を拡大する動きを活発化している。
これまで中国最大手の杭州中策ゴムやリンロンタイヤなどが東南アジアで新工場を相次いで稼働させているが、近年は貴州タイヤやトライアングルなども動き始めた。貴州タイヤは現在建設を進めているベトナム工場を2019年に稼働させ、トライアングルも米ノースカロライナ州に新工場を建設する。
また、複数の中国企業は中国国内での販売比率を高める戦略を進めている。好調な新車販売を背景にタイヤの需要が年々高まる反面、特に乗用車用タイヤでは現地メーカーのシェアが高いとは言えない状況だ。その理由の一つに、ユーザーの海外ブランドへのこだわりが強いことが挙げられる。今後、ブランド力を高めて消費者にいかに受け入れられるかが焦点となってくる。
総生産量のうち約4割が輸出向けとされる中国製タイヤ。米政府が2015年に中国製の乗用車・ライトトラック用タイヤに高い関税措置を発動して以降、輸出量が激減した。
米専門誌・モダン・タイヤディーラーの統計によると、2017年の中国製乗用車・ライトトラック用タイヤの輸入本数はこの10年間で最低の1230万本だった。
今後、米政権が追加関税を適用すれば、中国の現地メーカーは大きな打撃を受ける可能性が高まっていきそうだ。