住友ゴム工業が欧州市場で事業展開を加速させる。欧州への輸出拠点として2015年に稼働したトルコ工場で生産増強を進めるとともに、FALKEN(ファルケン)タイヤの新車納入や市販用タイヤの取り扱い店舗の拡大を進める。複数のタイヤメーカーがひしめく市場の中で、2022年までにシェアを現在より約2ポイント増の5%に引き上げるとともに、市場で中価格ゾーンに位置付けられる「ミッドセグメント」でトップを目指す方針だ。
住友ゴムは10月上旬にトルコ工場を公開し、欧州市場における事業戦略を示した。今後、プレミアムカーをターゲットに欧州の自動車メーカー向けの納入拡大を図るほか、ファルケンタイヤを取り扱うディーラーを現在の1.5倍に増やす。欧州におけるタイヤ販売量は、2022年に2017年比約1.6倍の2000万本レベルに達するもようだ。
同社は2015年6月にトルコ工場(チャンクル県)を稼働した。また2015年10月に米グッドイヤー社とアライアンスを解消した後、経営の自由度が増した欧州市場において事業展開を加速している。2016年に世界3極体制を発足し、その一つとして欧州・アフリカ本部を立ち上げた。その後、2017年には英タイヤ販売大手ミッチェルディーバー社を買収。さらに独ハナウ市にテクニカルセンターを設けるなど、現地のニーズに沿った開発体制の強化や欧州カーメーカーへのアプローチを積極化している。会見で黒田豊取締役常務(欧州・アフリカ本部長)は、「欧州域内での開発、生産、販売体制が整い、これからその成果を出していく時だ」と強い意欲を示した。
一方、同社はグッドイヤーとの提携解消によって欧州ではダンロップブランドが使用できないため、今後はファルケンのブランド力向上や評価がどこまで浸透するかが成長の鍵になる。
欧州では市場が主に3つのゾーンに分かれており、仏ミシュランや独コンチネンタルなどがトップブランド。最も安価なカテゴリーに新興国メーカーがあり、その中間に位置するのがミッドセグメントでファルケンもここに含まれる。現状は韓国のハンコックが首位だが、同社では「数年で追い越す」と強気の姿勢だ。
その背景にはマーケットへの影響力が大きいとされる自動車雑誌による比較テストがある。ここで複数の主力商品がトップブランドを上回る評価を獲得し、その実力を証明してみせた。また、新車事業では従来の量販車種だけではなく、プレミアムカーへの採用も始まっている。欧州ではタイヤ交換時にユーザーが新車装着タイヤと同一のモデルやブランドを求める傾向が強いため、市販用のビジネスへの波及効果も期待できる。
欧州全体を見渡せば市場は成熟しており、将来的に需要の大幅な増加は見込まれないが、本格展開を始めて間もない住友ゴムにとっては成長の余地は大きく残る。ブランド数が多いことから「トップでもシェアは10%以下」とされる激戦市場で、2022年にシェア5%獲得を目指して需要の取り込みを急ぐ。