2月中旬に行われた国内タイヤメーカー4社の決算発表会に合わせて、各社のトップが将来に向けたビジョンを語った。ブリヂストンはソリューション事業を一層強化して新たな価値を生み出していく考えを示し、TOYO TIREは今後本格化する三菱商事との資本業務提携のシナジー効果を早期に実現させていく意向だ。また、住友ゴム工業や横浜ゴムは、現在取り組んでいる中期経営計画の進捗状況を説明し、欧州や北米をはじめとしたグローバルでのタイヤ事業を更に拡大させることで収益性を高めていく。
ブリヂストン、ソリューション事業強化
「全ての分野でソリューション事業を展開する」――ブリヂストンの津谷正明CEO兼会長は2月15日の会見でこう力を込めた。
同社は今年1月、蘭トムトムの子会社で、運送事業者向けに道路情報や目的地までの最適なルートの提供などを行うトムトムテレマティクスを買収すると発表している。津谷CEOは、「特に欧州の場合、ドライバーは違う国の言葉も通じないルートを走行することがあり、デジタルフリートソリューション事業は非常に有効」と述べた。
その上で、同社が将来描くのは、“断トツ”の商品とサービス、グローバルでのサービスネットワークの構築となる。ITを活用することで、タイヤに関する様々なデータが取得できるようになり、これを商品やサービスのレベルアップにつなげていく。
会見に出席した石橋秀一副会長は「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)をどうやって支えるか。デジタルを活用してスピードを上げて、お客様の困りごとを解決するソリューションを提供する」と意欲を示す。今後、新たな価値を創出することで、「真のグローバル企業」「業界において全てに断トツ」という経営の最終目標に向けて勢いを加速させる。
住友ゴムは欧米事業の拡大へ
中期経営計画の中で欧米での事業拡大を掲げている住友ゴム工業。池田育嗣社長は、「ファルケンブランドの価値が向上し、欧州、米国ともに販売本数は2ケタ増となった」と手応えを示した。
この間、欧州ではプレミアムカーへの新車納入を拡大させ、市販用では現地の自動車雑誌で高い評価を得ることで販売増につなげた。一方、テクニカルセンターの運用を始めた米国では、市販用タイヤの設計業務を日本から移管するとともに、2020年に新車用タイヤの開発をスタートさせる。今後、現地のニーズに最適な商品を従来よりスピーディに投入していくことが可能となる。
なお、同社は3月末に山本悟常務が新社長に就任することが決まっている。池田社長は「グローバルでの生産販売体制の構築など成長への基盤を築いた。営業出身の新社長のもと、グループ一丸で高収益路線に向かってほしい」と期待を込めた。
横浜ゴム、国内外で積極的な商品投入
山石昌孝社長が15日の会見で中期経営計画の取り組みを説明した。その中で、事業展開から50周年を迎える北米市場では今年、「アドバン」ブランドで4商品、「ジオランダー」「アイスガードブランド」でそれぞれ2商品など多くの商品を投入する計画を明らかにした。
また、生産財タイヤではオフハイウェイタイヤを軸に事業強化を進める。国内大手建機メーカーへATG製タイヤの納入を開始したほか、農機用で日本市場向けサイズを追加するなど、ATGの国内での拡販に注力する方針だ。さらに、トラック・バス用タイヤでも超偏平シングルタイヤのサイズ拡充をはじめ、日本、北米、欧州でラインアップの拡充を図る。
TOYO TIRE、三菱商事とのシナジー創出へ
昨年11月に三菱商事との資本業務提携を発表したTOYO TIRE。清水隆史社長は「年明けからタスクフォースを組成した。中長期視点から自動車市場やタイヤにもたらす変化を意識し、今後のビジネス面積の拡大、更なる経営基盤の強化と部門横断的な活動を行っている」と進捗状況を話した。その上で、「生産能力の増強などを積極的に行うことでステージの向上を図る」と改めて決意を示した。
現在、7つのタスクフォースを立ち上げ、日本、中国、欧州、中東・アフリカ、アジアの「5つの市場」と「調達」「技術」について協議を始めており、三菱商事の海外ネットワークを活用してマーケットの開拓を目指す考えだ。
清水社長は「人材交流を活発化させ、最大限に提携効果を出していきたい」と展望を述べた。