国内市場で乗用車用オールシーズンタイヤの注目度が高まっている。日本グッドイヤーが数年前に国内へ本格投入し、さらに今年から日本ミシュランタイヤが全国展開を開始するなど日本でもユーザーの選択肢が増えてきている。欧米では市場の一定数を占め、既にユーザーに定着したオールシーズンタイヤが、今後日本市場でどこまで存在感を発揮できるのか――日本グッドイヤーがこのほど報道向けに開催した説明会でその動向を探った。
調査会社GfKジャパンが昨年実施したアンケートによると、オールシーズンタイヤの認知度は8割に達し、北関東や首都圏、甲信越・北陸では商品の特徴まで理解しているユーザーが4割を超えることが明らかになった。調査ではオールシーズンタイヤの利用者は全体の約5%にとどまっているものの、そのイメージとして「便利」(35%)に次いで「万能」と「一回試してみたい」がそれぞれ25%で続くなど、国内でも関心は高まりつつあるようだ。
そもそもオールシーズンタイヤは、夏季のドライ・ウェット路面から冬季の雪道も走行できる全天候型の商品を指し、サイドウォールには、“M+S(マッド&スノー)マーク”や欧州の冬タイヤの規格である“スノーフレークマーク”が刻印される。
M+Sは、夏タイヤと比べて雪道や泥道での走行に優れたタイヤを認証するもの。トレッドパターンの溝深さや長さ、切込み角度などの項目に基準を設けている。一方、スノーフレークマークはトレッドパターン、トレッドコンパウンドまたは構造が厳しい寒冷地での走行のためにデザインされたタイヤに表示され、この認証でM+Sもクリアできる。
米国ではM+Sマークのみのオールシーズンタイヤも流通しているが、日本グッドイヤーが展開する「Vector 4Seasons Hybrid」や「Assurance WeatherReady」は、M+Sマークとスノーフレークマークの両認証を取得。また、2商品ともに高速道路の冬用タイヤ規制もしくは普通タイヤチェーン規制での走行が可能だ。
ただ、同社が「過酷な積雪・凍結があるエリアではスタッドレスタイヤの利用を推奨する」と説明しているように、アイスバーンなどではスタッドレスタイヤが適している点に注意したい。
国内ではまだ利用者が多いとは言えないオールシーズンタイヤだが、グローバルに目を向けるとユーザーへの普及が進んでいる地域も多い。
例えば、厳しい冬季路面となる地域が限られている北米では安定して高いシェアを獲得。米国ゴム工業会(RMA)の統計によると、市販用でオールシーズンタイヤが全体の約7割を占める。
また、積雪時の走行規制やシーズンごとにタイヤを交換する文化があるなど日本と市場環境が近い欧州でも「オールシーズンタイヤの利便性が徐々に認識されてきている」(日本グッドイヤーマーケティング本部プロダクトマーケティング部長の岸宗弘氏)という。
同社によると、欧州は2013~2017年に市販用のオールシーズンタイヤが年平均で20%以上の成長率を記録し、ユーロプールのデータでは2017年の市販用シェアは8%だった。欧州タイヤ・ゴム製造者協会(ETRMA)の調査でも市販用のオールシーズンタイヤの販売数量は前年比1.2%増の2億754万7000本と成長している。
日本国内でもドライバーの生活環境によってはオールシーズンタイヤの利便性が発揮できるケースは大いにあるだろう。今後どのようにユーザーのニーズに対応し、認知度を高めていくのかが、市場拡大へ向けた鍵となっていきそうだ。