TOYO TIRE(トーヨータイヤ)が社内のあらゆる業務でデジタル化を加速させ、データを横断的に活用することで効率的な生産や需要を先読みした販売体制の構築、将来に向けたビジネス創出を目指す。
同社は4月1日付で「デジタル推進室」を新設した。「顧客まで繋がる一気通貫の仕組みで機動的な経営を実現する」(同社)ことを目的に、様々な部門から約30名が参画する。同推進室の室長に就任した金井昌之取締役常務執行役員は、「当社が今持っているデータは何なのか、それがどう活用できるのかといったことも含めて業務のやり方を変えていかなければならない」とその意義を話す。
従来は開発や生産、販売など部門ごとにデータを収集、利用していたが、今後は得られたデータを「横串を刺すようなイメージ」(清水隆史社長)で包括的に管理していく。地域ごとのより精密な需要予測や、タイヤでどのような性能が求められるのかなど数値として明確に分かるようになる可能性がある。将来的には工場の生産計画や物流の効率化なども含めたサプライチェーン全体の改善にもつなげていく。
デジタル化の一環として、IoT(モノのインターネット)を取り入れた生産現場のスマート化も積極化していく方針だ。現在、新設を検討しているタイヤ工場では当初から全面的にIoTを導入するほか、既存工場でも順次スマート化に取り組む。これまで人間の勘と経験に頼っていた部分も数値化するなど、「ある事象に対してどのような因果関係があるのか」(金井常務)、あらゆる可能性を模索していく。
一方で金井常務は「機械とデータがあれば、新興メーカーも同じような製品が作れてしまう」とも話す。大変革期を迎えた自動車産業の中で、「さらに上に行くためにどういうものを発想していくのかは人間であり、それが今後勝ち残る何かになる」と将来への展望を話した。
業務改善への取り組みは住友ゴム工業でも本格的に動き出している。同社は昨年下期に事務作業の一部でソフトウェアを使って自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を試験的に導入。経営企画部で各部門から集められたデータをフォーマットに取りまとめるような定形的な業務に活用したところ、人間で17時間かかっていた業務をRPAでは1時間に短縮できたという。
この結果を受けて他の部門からも導入の要望があったため、今年4月に人事総務部の傘下に「RPA推進室」を新設した。働き方改革の一環として残業時間の削減など、今後様々なアイデアを出し合いながら、最適な活用方法の検討を進めていく。