人手不足解消の一手に ミシュランが運送会社向けに提案

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カテゴリー: ニュース

 日本ミシュランタイヤは6月下旬に三重県内で輸送事業者を対象にしたセミナーを開催し、深刻化している人手不足に対して従業員の満足度を高めることで課題解決を図るソリューションを提案した。また、同社が3年前にスタートした「運転事業者向け診断パッケージ」を導入したユーザーも出席し、従業員のモチベーション向上の重要性やキャリアによる目的の違いを認識することが成果につながることが示された。慢性的な人手不足は今後さらに厳しさが増すと予測される中、企業のトップが先頭に立って改革に動き出すことで活路を見いだせるかもしれない。

セミナーの様子

 「この車両は1カ月前からずっと止まったままなのか」――横浜市内でトラック用タイヤをメインに扱う販売店では、顧客の運送会社に対して、溝の減ったタイヤを交換するための許可を申請するが、「いつまで経っても指示が来ない」と話す。そして1カ月後の点検時に冒頭のように気が付く。その車両を運転していたドライバーが退職したまま乗り手がいない状況が続いていることが理由だという。「ドライバーが減少すれば保有台数も減る。タイヤの消費量も少なくなり、自分たちの商売にも影響を及ぼすかもしれない」と危機感をにじませる。

 実際、信用調査会社の統計では、2018年に運送業界で人手不足を理由とした倒産は前年から2割ほど増えていることが分かっており、こうした傾向は今後も続いていきそうだ。政府の資料によると、生産年齢人口(15~65歳)の割合は、2000年の約7割から2030年には6割を下回る水準になると予測されている。さらに、民間の調査や輸送関連の業界団体の予測では将来、不足するトラックドライバーの数は24万人とも28万人とも言われている。

 一方で、その担い手を育成、支援するために様々な技術やサービスが開発され、業務の効率化に向けた動きも活発化している。その中で、ドライバーの安定確保を目的に独自のサービスを展開しているのが日本ミシュランタイヤだ。

 同社は2016年に「運送事業者向け診断パッケージ」を開始した。運送会社の従業員へのヒアリングを通じてその会社の強みや課題を洗い出した上で、帰属意識や意欲向上を図ることが狙い。いわば、会社に対する正直な思いを明確化し、働きやすい環境を構築することで社員の定着を図っていくものだ。

社員の意識向上が顧客満足度へ

裕進運輸の社屋

 「診断パッケージ」はこれまでに約30の運送会社が利用し、改善を行うことで成果が表れた事例も少なくないという。その1社が裕進運輸(三重郡菰野町)だ。従業員は50名で、大型車15台をはじめ、合計43台を保有している。

 同社の渡部裕之社長は「当社は中途採用が多いが、近年は若い人が来なくなった。新卒採用も厳しい」とサービス導入の背景を話す。その上で「診断を行った後、ドライバーが望んでいることが自分たちとは違っていることが分かった。給料や福利厚生は当然求めているが、意外にも達成感という意見が多かった」と振り返る。また、アンケートには自由に記入できる欄があり、そこで出された要望にも可能な限り応えた。

 調査は2回に分けて実施し、「会社に誇りを感じている」という社員は、1回目が5割だったのに対し、改革に取り組んだ後の2回目は8割に向上。その結果、今年4月には6名の新卒者を迎え入れることにもつながった。

 日本ミシュランタイヤB2Bタイヤ事業部の田中禎浩マーケティングディレクターは、「社員満足度が高い会社は顧客満足度も高いことが統計でも示されている。我々はこれからもこうした機会を提供していきたい」と意欲を示す。さらに、「診断パッケージ」で蓄積したデータから内容のリニューアルも検討し、輸送業界の発展に一層貢献していく考えだ。


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