8月9日までに行われた国内タイヤメーカー4社の決算説明会で、各社のトップが将来に向けた施策を語った。
ブリヂストンの江藤彰洋COO兼社長は、「欧州ではフリートビジネスが非常に大きな起爆剤になる」と、今年4月に買収した蘭トムトム子会社のデジタルフリートソリューション事業について期待を述べた。
その上で、買収したトムトムテレマティクスが持つデバイスやノウハウに、ブリヂストンのタイヤビジネスの強みやネットワークを組み合わせることで新たな価値や市場に合ったソリューションビジネスを生み出していく考えを示した。
「技術革新による市場変化を事業機会と捉えて、これまでとは異なるサービスや付加価値を備えたモノづくりの会社として新たなステージで戦える企業を目指す」と力を込めるのは住友ゴム工業の山本悟社長だ。
同社は来年2月に2020年から25年までの新たな中期経営計画を公表すると発表した。昨年2022年までの5カ年計画を策定していたが、環境変化により計画達成は困難な状況にあるためで、新たな計画ではデジタルイノベーションの推進などを盛り込む予定だ。
山本社長は新中期経営計画の柱の一つとして「デジタルイノベーションの推進」を挙げた。また、自動車産業の大きな環境変化の中で、自社にはない技術や分野に対してはオープンイノベーションを活用していく意向で、「これから異業種との連携が重要になる」と展望を話した。
横浜ゴムの山石昌孝社長は2020年度をゴールとした中期経営計画の進捗状況を説明した。
消費財タイヤのプレミアムカー戦略では、トヨタ「RAV4」やマツダ「MAZDA3」といった車両へOE納入を開始したほか、生産財タイヤではATG製タイヤの日本国内導入を推進していることなどを成果として挙げた。
今後の取り組みについては、「消費財タイヤでプレミアム戦略を更に強化して、生産財事業に負けないようにしていきたい。そのためには積極的に商品を投入していく」と述べ、更なるシェア拡大への意欲を示した。
TOYO TIRE(トーヨータイヤ)の清水隆史社長は「100年に一度の変革期にあるが、変化をチャンスに変えて生き残りではなく勝ち残る」と話し、供給体制の拡充など次世代に向けた戦略を説明した。
同社は2022年から欧州初の生産拠点としてセルビアで新工場を稼働することを決めており、それに先駆けて今年秋にはドイツに研究開発(R&D)センターを構える。
清水社長は「現地に生産拠点を構えてコスト競争力を一気に高めていく。これまで取りこぼしていた需要の取り込みはもちろんのこと、R&Dセンターとの連携、工場オペレーションのIoT(モノのインターネット)化にも取り組み、高性能タイヤの低コスト供給を実現する」と述べ、一段上のステージに挑戦していく姿勢を表した。