9月に入り本格的な冬タイヤの商戦期を迎えた。業界団体の予測では今シーズンの需要は昨年を下回ると見込まれている中、10月の消費増税を前に駆け込み需要の動きも見られる。需要の拡大とその反動減が懸念されるなど不透明感がある市場環境でどのような販売施策を展開していくのか――国内各社に今期の販売方針を聞いた。
JATMA(日本自動車タイヤ協会)の統計によると、2018年の冬タイヤの販売実績は四輪車用合計で、前年同期比4%増(販社販売ベース)と好調に推移した。特に年明けに都市部で降雪があったことで需要が増加。また、下期は暖冬傾向で例年より冬タイヤへの交換が遅れた地域もあったが、後半には持ち直した格好だ。
こうした中、各社の販売状況は概ね好調に推移したもようだ。ブリヂストンは「確実に需要を獲得できた」としており、また数年前から非降雪エリアで継続してきた冬タイヤの保有促進策についても「新しいお客様を中心に共感を獲得できている」と手応えを示す。
住友ゴム工業は、2017年から訴求してきたキャッチコピー“モチ・ロン・ギュ”が市場で広く認知されたことから、「ウインター・マックス02」が販売を伸ばした。
横浜ゴムはこれまで取り組んできたセールススタッフの教育強化により、「商品知識が深まった」と評価。さらに、2017年に発売した「アイスガード6」の評価が口コミで徐々に広まってきているという。
需要は3%減の予測
今シーズンについてJATMAでは下期の冬タイヤの需要を3%減と見込んでいる。上期は昨年の反動で25%減と落ち込んだことから巻き返しも期待される中、各社は様々な販売施策を打ち出して拡販を図る構えだ。
ブリヂストンは「降雪状況や新車販売により変動の余地は大きくある」としており、需要が予測を上回った場合にも対応できるよう準備を進める。同社は乗用車用として「ブリザックVRX2」「ブリザックVRX」の2ライン展開を継続しつつ、今年5年ぶりにモデルチェンジしたSUV/4×4専用スタッドレス「ブリザックDM-V3」を軸に、SUV向けでも需要拡大を目指す。
また、販売店向けには試乗会を開催したり、販売フレーズの勉強会などを行ったりすることで商品への理解を深める活動に注力していく考えだ。
一方で、ここ数年非降雪エリアでの冬タイヤへの関心が高まりつつあったのに対し、昨シーズンの暖冬を受けて意識が薄れてしまうことを懸念材料として挙げる。こうした状況に対しては、新プロモーション「100人のちゃんと買い」を通じて、冬タイヤの必要性を継続的に訴求していく。
住友ゴム工業は、ダンロップとファルケンの2つのブランドで需要の拡大を図る。ダンロップでは氷上性能の高さや性能が長く持続する点を一貫して訴求。また、ファルケンのスタッドレスタイヤではウェット性能と高速操縦安定性能という付加価値を提案していく。
横浜ゴムは、「アイスガード6」が好評を得ていることから、今シーズンは商品を使用したドライバーのインプレッションを訴求内容に加える予定だ。TOYO TIRE(トーヨータイヤ)はSUVやミニバンのユーザーに対して「ウィンター・トランパスTX」の拡販でシェア向上に取り組む。
さらに、今シーズンは住友ゴムやトーヨータイヤが新商品を投入したオールシーズンタイヤの動向も注目される。夏タイヤとしてポジショニングされることも多いが、実際に需要が発生するのは秋以降と見られており、展開しだいでは非降雪地域での存在感が高まる可能性がある。
消費増税の影響は
また横浜ゴムが、「消費増税により、例年よりも商戦時期が早まる」と指摘するように、10月からの増税が与える影響も大いに気になるところだ。
ブリヂストンは「冬タイヤとしては過去に例がないシーズン中の増税となるが、供給面の準備は万全を期す」と体制を整える。一方で、「降雪が始まるまで保管するという手間を考えると、購入は増税後でも良いという方もいるのでは」(住友ゴム)という見方もある。
今後の動きは不透明な部分も少なくないが、タイヤ業界では8月から値上げが始まっていることもあり、価格変動の背景を顧客に対して丁寧に伝えていくことが一層重要となっていきそうだ。