住友ゴム工業は10月3日、日立製作所、PTCジャパンと連携してAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用したタイヤ生産システムの構築を進めると発表した。新システムは、生産設備の稼働データをリアルタイムでモニタリングし、現場を可視化するもの。それらのデータをAIで分析し、品質や生産性、設備保全、省エネルギー化などに影響を与える要因を高精度に探索する。これにより、スピーディーな意思決定による高品質・高効率な生産の実現を目指す。
同社は昨年下期から名古屋工場(愛知県)をモデル工場として解析を実施している。これまでデータ収集・解析時間を90%短縮したほか、生産時に発生する仕損の30%低減といった効果が検証できている。これらを踏まえ、2025年までに国内外に12あるタイヤ工場全てに新システムを導入する計画を決定した。
今回の協業では、生産設備からのデータ収集にPTCの「シングワークス」というプラットフォームを用いる。住友ゴムの山田清樹製造IoT推進室長(タイヤ生産本部整備技術部長)は、「世界標準で仕組みを構築したいと考える中で、この仕組みに一番のメリットがあった」と、採用の理由を話した。
同社がグローバルに展開する生産工場には、自社で立ち上げた拠点以外に買収した工場もあり、制御機器は完全には統一されていない。こうした環境でも、「シングワークス」は拠点間で異なるファクトリーオートメーション(FA)システムのデータを統合できるという。
また、リアルタイムで収集したデータは日立の「ルマーダ」で分析し、現場にフィードバックすることも可能だ。例えば、成形から加硫の工程では“材料待ち”が発生するが、新システムの導入によって即時に進捗を確認することで、成形機の補助や段替え計画の変更といったアクションにつながり、ロスタイムの低減が期待できる。
一方、品質のばらつきに対しては、何が要因でどの程度影響を与えているのかを分析。手作業でデータを収集するのに比べて詳細に原因を特定し、改善サイクルの迅速化やグローバルでの品質向上、仕損低減を図る。
今後は、省エネや予知保全などテーマの拡充を進め、来年中を目処に名古屋工場で全てのシステムを立ち上げる計画だ。
同社は従来、人間の知識やノウハウに頼った分析を行っていたが、山田室長は、「このままでは今後行き詰まってしまう」と述べ、「データを活用した意思決定ができるように、社内でデータドリブン文化の醸成を広めていく」と展望を示した。
製造業では、競争の激化や人手不足など多くの課題がある。同社では高効率で無駄のない生産システムの構築に取り組み、将来の競争力強化につなげたい考えだ。