自動車産業が大変革期に突入する中、“OPEN FUTURE”をテーマとした「東京モーターショー2019」が開幕した。新たなモビリティに対応する技術革新が求められる未来に向けて、タイヤメーカーからブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム、日本グッドイヤーなどが出展。将来を見据えたコンセプトや先端技術を採用した新モデルを発信した。
ブリヂストン 革新素材で社会を変える
先端技術担当の田村康之執行役員と会田昭二郎フェローが登壇し、ゴムと樹脂を分子レベルで結びつけた世界初のポリマー「SUSYM」(サシム)の革新性と未来への展望を紹介した。
田村執行役員は、「自動車産業は100年に1度の大変革期を迎え、その対象は自動車から社会全体に変わりつつある。当社も社会全体を支えたいと思っているが、従来の技術にとどまっていては達成できない」と話した。
その上で、「それを可能にする革新的な素材、サシムを手に入れた。これまでの素材の性能をはるかに超え、ユニークな特性があることが分かってきた。どんな分野でどのような活用ができるのかを今後、皆様と一緒に考えて一緒に新しい価値を創造していきたい。これがブリヂストンの考える新たなイノベーションの形である」と力を込めた。
サシムは同社が昨年5月に発表した「HSR」を進化させたもの。従来のゴムよりも高強度・高耐久であるとともに、「穴が開きにくい」「治る」「低温でも強い」といった特徴がある。
開発を担当した会田フェローは、「形態や物性、性能も自由自在に操ることができる。今後、サシムを使用して社会全体を支えていきたいが、その方法は我々だけでは考えられない。皆さんと一緒に作っていきたい」と、更なる進化、発展への意気込みを示した。
住友ゴム工業 付加価値のあるソリューション展開を
前回の東京モーターショーで発表した「スマート・タイヤ・コンセプト」の中の性能持続技術を投入した乗用車用タイヤ「エナセーブNEXTⅢ」を計画より1年前倒しして12月に発売すると発表した。従来品と比較してウェット性能の低下を半減させたことが特徴となる。山本悟社長は、「耐摩耗性能を更に向上させつつ、性能持続技術と高機能バイオマス材料によって様々な性能向上を果たした低燃費タイヤだ」と自信を示した。
また、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の普及を見据えて、センサーで得られるデータを活用したソリューションサービスを2020年から法人向けに始めると明らかにした。走行時の空気圧、温度を監視することで、パンクなどが起きた際に効率的なメンテナンスができるようになる。さらに、デジタルツールの機能を追加してタイヤの摩耗状態を把握し、ローテーションやメンテナンスを最適なタイミングで提供することも視野に入れる。
将来的には個人向けにもサービスを行う予定で、スマートフォンと連携してアラートを受信できるほか、位置情報と連動させてタイヤの交換時期や交換場所を地図で表示するなど、より多くの情報を提供していく。
山本社長は「市場変化は新たな事業機会」と述べ、「新しい時代のためにこれまでとは異なるサービス、付加価値を備えたモノづくりの会社として社会の発展に寄与していく」と意欲を話した。
横浜ゴム デジタル化への開発加速
野呂政樹取締役常務執行役員が登壇し、タイヤセンサーをアルプスアルパインと共同開発していることを発表した。将来的には摩耗状態や路面情報を検知し、得られたデータをデジタルツールで管理していくデジタルソリューションの展開を視野に研究開発を加速していく。
野呂取締役は「車両を多く管理している会社では、個々の車両情報をクラウドで一括管理することにより、計画的なメンテナンスを行うことができる。個人の車両ではセンサーで得られた情報を当社のタイヤサービスに結びつけることによってパンクなどが発生した際、より円滑な対応ができる」と述べた。
その上で、「センサーから得られた情報をいかにお客様にフィードバックしていくか システムやアプリケーションの開発が今後は重要となる。それがビジネスの付加価値になっていく」と見通しを示した。
一方で、「これからはタイヤの快適性の指標が変わってくる」と指摘。今後はコネクテッド、自動化、電動化などに対応した技術が求められてくるようになれば、従来の乗り心地や静粛性といった快適性以外に、「ノーメンテナンスやタイヤに関する困りごとから開放されるために、タイヤメーカーとして取り組んでいく必要がある」と語った。
グッドイヤー FACEをコンセプトに
アジア・パシフィック地区のライアン・パターソン社長が日本市場のビジネスを説明し、製品開発品質担当のデイブ・ザンジグ副社長が技術開発の取り組みをプレゼンテーションした。
グッドイヤーは製品力とブランド力、顧客の力が原動力となり、日本市場で5年連続で成長しているという。その上で、パターソン社長は「我々はオールシーズンタイヤカテゴリーを創出し、日本市場でもトップメーカーであり続けている」と話した。
一方で、“CASE”に代表されるように社会のトレンドが大きく変化していく中、技術開発も積極的に進めていく考えだ。その中で同社では“FACE”として、Fleets(フリート)、Autonomous(自動運転)、Connected(コネクテッド)、Electric(電動化)の4つをコンセプトに掲げている。
ザンジグ副社長は「特に電動化は社会に大きなインパクトを与える」と述べ、「当社は積極的にイノベーティブな製品開発を続けていく。未来のモビリティ社会に対して、よりスマートで、サステナブルで、安全性を担保した製品を作り続けていく」と強調した。