ブリヂストンが2020年に東京・小平に研究開発拠点「ブリヂストン・イノベーション・パーク」を開設すると発表した。ソリューションビジネスへの転換とイノベーション(技術革新)の創出を加速させている同社にとって、単なる新拠点ではなく、将来に向けたビジネスの在り方にも影響を与える重要な位置づけとなっていきそうだ。
「ソリューションによって社会やお客様に貢献する」――11月29日に都内で開いた会見で石橋秀一副会長はこう述べ、「我々だけではなく、お客様やパートナーと一緒に新たな価値を“共創”する」と決意を表した。その上で次のように続けた――「ソリューションを支えるのはイノベーションだ」
同社は東京・小平地区の研究開発拠点を再構築し、2020年に「ブリヂストン・イノベーション・パーク」を開設する。企業博物館をリニューアルして6月に開所する「イノベーション・ギャラリー」を皮切りに、オープンイノベーションを推進する施設や小規模のテストコースなどエリア内に合計4つの施設を順次設置していく。新たな施設は、「技術やビジネスモデル、デザインのイノベーションを加速する複合エリア」と位置づけており、石橋副会長は「4つの施設を統合してイノベーションを生み出す」と意気込む。
2021年11月に竣工予定の「Bイノベーション」は、社内外の交流を促進する重要な場となる。さらに、同じタイミングでテストコースや解析設備を備えた「Bモビリティ」を稼働させ、「Bイノベーション」で生み出されたアイデアを実車を使って検証していく。
これにより「皆で議論してすぐにテストを行い、すぐに戻すような開発を行うことができる」(石橋副会長)という。津谷正明CEOも「欧州の開発拠点で実施しているように、すぐにデータが取れるようになる。小平でもレベルが違う開発ができると期待している」と話す。
さらに2022年3月には「ブリヂストンAHLアリーナ」を竣工させる。この施設ではスポーツを通じて多様な人々が交流するといった共生社会を実践していく予定だ。
一方で石橋副会長は「ハードだけを作っても、魂がなければイノベーションは継続できない」と語り、「自由な発想で議論して、チャレンジをするようにしていく」と人材育成への取り組み姿勢を述べ、ハードとソフトの両輪で変革していくことの重要性を強調した。
改革は小平だけにとどまらない。来年初めには東京・京橋のミュージアムタワー京橋に「ブリヂストン・クロス・ポイント」を開設する。この建物は同社が長年にわたり本社機能を設置していたビル所在地に2019年7月に竣工した。1階にショールーム、21階にはイベントなどを開催できる多目的オープンスペースがあるオフィスを設けて、イノベーションとソリューションを発信していく計画だ。
自動車産業が100年に1度と言われる大変革期を迎え、将来はタイヤ業界においても他業種からの参入など競争環境が変化する可能性を指摘する声も少なくない。「2020年を『価値創造』の起点として、新たな社会づくりを支える会社へと進化させる」と将来を見据えるブリヂストン。市場の変化やニーズを先取りした革新をいかに生み出していくのか。世界一のタイヤメーカーとして挑戦は今後も続いていく。