自動車産業界がCASEやMaaSなど大きな変革期に直面し、さらにグローバルでは政治や経済の先行きに不透明感が漂う中、2020年はどのように事業を展開し、強化していくのか――1月23日に日本自動車タイヤ協会が開いた賀詞交換会、24日に日本ゴム工業会が開催した幹事会後の懇親会で、メーカー各社のトップに今後の展望を聞いた。
ブリヂストン 江藤彰洋COO兼社長
「変化するモビリティへの貢献の仕方として、当社独自のソリューション『ブリヂストンT&DPaaS』を提案している。すぐに完全なものになるわけではないため、一つ一つ実現に向けて活動していく。
従来の商品やサービスに対してもコツコツ取り組んでいくが、新たなモータリゼーションが生まれていく中、デジタル化を進めて当社の『断トツ』の商品、サービス、ネットワークを組み合わせ、新たな価値となるものも提供していきたい」
ブリヂストン 石橋秀一副会長
「グローバルで断トツのタイヤ・ゴム会社、断トツのソリューションカンパニーになることを目指すために、ソリューション化が本格的に加速する年になる。さらに東京オリンピック・パラリンピックでは当社の様々なイノベーションを紹介することで企業価値を上げていく」
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住友ゴム工業 山本悟社長
「ここ数年はグローバルでの基盤作りを進めていた。地産地消を図り、ブラジルや南アフリカ、北米、トルコなどで工場や販社を拡充し、日本も含めて経営環境を整えている。今年は新中計の初年度となるため、良いスタートを切りたい。それぞれのエリアでしっかりと利益を上げられるように体制を強くする。
工場のIoT化は名古屋工場で基礎を固めている。さらに進化させ、新中計の期間内にグローバルの工場全体でIoT化を確実にやりきる」
住友ゴム工業 池田育嗣会長
「会長になって考える時間ができ、社長は事業の執行、会長は対外的な活動を行うという役割がきちんとできるようになった。
昨年は米中の貿易問題や自然災害があり、さらに記録的な暖冬となった。何が起こるか分からないが、今年は少しでも良い方向にしたい」
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横浜ゴム 山石昌孝社長
「東京五輪閉会後に国内景気が冷え込むとの見方がある一方で、翌年以降になるのではないかとの見方もある。生産財タイヤはこのまま堅調に推移し、消費財タイヤは景気動向に連動しそうだ。プレミアムタイヤやホビータイヤなどの成長戦略を進めていく。
海外に関しては、米国は現在の好調を維持しそうだが、中国は厳しい状況が続くなどまだら模様だ。火災のあったフィリピン工場は2019年末にほぼ復旧し、損傷した設備に代わり新規に導入した生産設備の稼働を開始した。中計『GD2020』から新たな中期経営計画に向けて、良い1年になるようにしたい」
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TOYO TIRE(トーヨータイヤ)清水隆史社長
「現在進めている中期経営計画『中計’17』の最終年度として刈り取りを行っていく年となる。さらに将来に向かって新たな中期経営計画の始まりの年でもある。今年の秋くらいに新しい計画を発表したいと考えている。その中で米国市場を一層強化していくほか、さらに2022年には欧州工場が稼働するため、それに沿った戦略が軸となる。中東市場などでも地域密着型のビジネスを進めていく」
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日本ミシュランタイヤ ポール・ペリニオ社長
「リプレイス向けには例年以上にスピードを上げて、乗用車用やトラック・バス用、二輪車用タイヤなどで数多くの新商品を発表していく予定だ。その中にはこれまでと大きく異なるようなモデルもあるので期待して頂きたい。
ミシュランガイドでは今年、新潟県と岡山県が加わる。日本はポテンシャルが大きいため、いつかは全国をカバーできるようにしていきたい」
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日本グッドイヤー 金原雄次郎社長
「昨年は第3四半期までは業界水準を上回り好調に推移したが、第4四半期は暖冬の影響を受け失速した感がある。
2020年は競合他社がオールシーズンタイヤの分野に乗り出して来たが、それを歓迎したい。この分野のパイオニアとして、当社製品の性能の高さを強く訴求していく。また、日本グッドイヤーとして参加型モータースポーツ活動を積極的にバックアップを図る計画だ。活動を通じてブランドの認知度向上とイメージアップに努める」