住友ゴム工業は1月23日、タイヤ用ゴム内部の特定の材料を選択的に観測する手法を確立したと発表した。また同社はこのほど、この手法を活用し、ゴム内部の硫黄架橋の粗い部分・密な部分(粗密)を鮮明に観測することに世界で初めて成功したことを明らかにした。
茨城大学との共同研究による新手法は、同大学が新たに開発した量子線顕微鏡を用いて、製品化したタイヤ用ゴムを評価するもの。これにより、燃費性能や耐摩耗性能などに優れたタイヤの内部構造を導き出せることから、材料開発の加速化が期待できるという。
今回、新手法を確立したことで、硫黄架橋の粗密を選択的に観測することが可能になった。そのため、通常の観察では硫黄以外の補強材の情報が混じった画像データしか入手できなかったが、新手法によって、硫黄架橋やそのほかの補強材といった特定の成分がそれぞれ色付けされた鮮明な画像を得ることが可能になった。
自動車のタイヤ用ゴムは、天然ゴムや合成ゴムといったポリマー、カーボンやシリカなどの補強材を含む数十種類の材料からできており、それぞれの材料がタイヤ内部で階層構造を作っている。そのため、同社は「タイヤ性能の向上にはタイヤ用ゴムの内部の各材料をそれぞれ分けて観察し、その階層構造を明らかにすることが必要となる」と指摘する。
また、「特にゴムの弾性を生み出す硫黄架橋の構造は、ゴムの強度や劣化などの経年変化に大きく関係すると考えられているが、ゴム内部での詳細な構造はこれまで未解明だった」としている。