タイヤメーカー4社の中間決算が出揃った。上期は新型コロナウイルスの感染拡大によりタイヤ販売に深刻な打撃を受けた一方で、足元では需要が回復しつつあることから、当期損益を未定としたブリヂストン以外の3社は通期では黒字を確保する見込みだ。感染の第2波、第3波への警戒感が強まっており、市場の先行きに不透明感はあるものの、徐々に挽回へつながっていくことが期待される。
ブリヂストンは新型コロナウイルスの影響が2022年上期まで及ぶと想定しつつ、グローバルのタイヤ需要は今年4~6月期をボトムに当面は緩やかな回復を予想する。ただ、第4四半期にかけてコロナ第2波による需要減を織り込み、販売量減や加工費の悪化を主な減益要因とした。
設備投資では増産投資を一部凍結する一方、高採算の大口径タイヤへのシフトや安全・防災・環境の分野へ注力する。また研究開発は「我々にとっての命で、将来の戦略投資を含めて捻出する」(石橋秀一CEO)として前年に近い水準を維持する方針を示した。なお、当期利益は新型コロナの影響が不透明であることから引き続き未定とした。
住友ゴム工業のタイヤ事業は下期に売上収益が12%減の3542億円、事業利益は38%減の209億円まで回復する見通し。新型コロナウイルスによる利益面へのマイナス影響は上期の351億円から下期は277億円に縮小する。山本悟社長は「公表値の達成、超過を目標に全社で取り組む」と意欲を示した。
足元のタイヤ販売本数は、中国市場はコロナ以前に近い水準へ販売が回復しており、北米も需要が戻りつつあることから、下期はグローバルで1割減レベルまで需要が回復する見込みだ。
横浜ゴムのタイヤ事業の売上収益は15.9%減の3800億円、事業利益は58.8%減の127億円を見込む。国内市場は海外と比べて改善しているほか、新車生産が北米で徐々に改善しており、中国では対前年でプラスに推移するなど回復傾向にあるという。ATG事業は印ダヘジ工場の生産能力増強や商品拡充を行い、事業利益は42.3%減の60億円と予測する。
山石昌孝社長は「新型コロナウイルスの感染拡大に留意しつつ、通期予想の数字を達成できるよう全社一丸となって邁進する」と述べた。
トーヨータイヤのタイヤ事業の通期予想は減収減益となる見込みだが、下期の販売は回復に向かい、売上高の減少幅が縮小すると想定している。
ピックアップトラック・SUV向けの大口径タイヤの販売が堅調な北米市場は通期で増益を見込み、日本市場も7~12月期では増益に転じる見通し。事業全体での営業利益率は前期より1ポイント程度下がるものの、上期の5.3%から通期では9.1%に回復。業界トップレベルの水準を維持しそうだ。
清水隆史社長は「市販用タイヤは主要マーケットで4月をボトムとして年初レベルに近い水準に回復基調にある。適正な需給体制を構築して、新商品投入により、需要喚起につなげる」と話した。
上期は2社が最終赤字に
新型コロナウイルスによる需要減の影響を受けた上期は各社ともタイヤ販売量が大きく減少したほか、工場の生産調整による製造コストの悪化も響いた。特に4~6月期の新車用タイヤは需要が激減しており、住友ゴムは前年の5割ほど、トーヨータイヤも6割以上のマイナスとなった。ブリヂストンは最終損益が約220億円の赤字、住友ゴムは純損益が約93億円の赤字に転落しており、ともにリーマンショック後の09年上期以来の赤字となった。
ブリヂストンのタイヤ販売本数は乗用車・ライトトラック用が28%減、トラック・バス用が22%減となった。ただ補修用は落ち込みが緩やかで、特に18インチ以上の大口径タイヤや建設・鉱山用は底堅い需要があった。
タイヤ事業の調整後営業利益で、乗用車・ライトトラック用は87%減の98億円だった一方で、トラック・バス用はリトレッド事業で高い収益性を維持し152億円と64%減にとどまった。
住友ゴムのグローバルのタイヤ販売数量は22%減の4687万本。国内市販用は年初の暖冬で冬用タイヤの販売が落ち込んだことも響いた。横浜ゴムの販売本数もグローバルで18%減った。ただ、ATG事業は農機向けなどの市販用タイヤが堅調に推移したため、事業利益は黒字を確保した。
トーヨータイヤのタイヤ事業は売上高が13.6%減の1344億3000万円、営業利益は39.6%減の97億3300万円の減収減益だったものの、他社と比較すると落ち込み幅は少なかった。
清水社長は「市販用タイヤは国内や北米での影響が比較的少なく、上期後半に経済活動が回復基調にあったため」と説明している。また、「北米セグメントでは販売本数の落ち込みを最小限にとどめ、コスト削減によって増益となった」と振り返った。