住友ゴム工業の山本悟社長と横浜ゴムの山石昌孝社長が12月15日に会見を行い2020年を振り返るとともに、今後の展望を語った。来年も新型コロナウイルスの影響は懸念されるものの、山本社長は「変化をチャンスにしていく」と意欲を示し、山石社長は「2023年に過去最高の収益を目指していく」と述べた。
コロナによる変化をチャンスに
住友ゴムの山本悟社長は2020年を振り返り、「新型コロナウイルスの影響で4~6月は世界で需要が落ち込んだが、下期は持ち直しの動きが見られ、中国や北米で販売を拡大するなど想定より需要が回復した地域もあった」と述べ、「新型コロナへの対応を最優先に取り組みながら様々な施策を確実に行ってきたことで、次のステップへの道筋をつけることができた」と話した。
今年策定した中期経営計画で掲げた柱の一つ「高機能商品の開発・増販」では、中国で実車評価体制を確立したほか、日米欧を中心に高性能モデルの拡販に注力。特に北米市場ではSUV用タイヤ「ワイルドピーク」シリーズの販売が前年の1.5倍に増加したという。新車用タイヤでは採用車種の拡大に加えて、今後グローバルで電気自動車へのシフトが進むと見込まれる中、中国市場などで積極参入を目指す方針を示した。
一方、経営基盤の強化を目的とした社内プロジェクトでは組織体質の改善と利益基盤の強化を推進。山本社長は「社員の行動が変容しつつあり、横のつながりを活かし、スピード感のある働き方が進んできた」と評価し、「継続的なキャッシュ創出や利益改善の実現に一定のメドが立ってきた。来年以降は選択と集中による策定活動をスタートさせ、基盤強化を図っていきたい」と意欲を述べた。
2021年について、山本社長は「中期経営計画の実現に向けた施策をグローバルで強力に推進していく。そのために変革を更に加速させていく」と力を込め、新常態(ニューノーマル)に適応した事業運営に取り組む考えを示した。
新型コロナウイルスにより移動や接触が大幅に制限されるという状況は今後も続くと想定した上で、「変化への対応を定着させ、レベルの高いものにしていきたい。この変化をチャンスと捉え、生産・販売・開発など全ての面でデジタル技術を活用して科学的アプローチにより大胆に変革させて将来の発展につなげていく」と語った。
また、近年重要性が高まっているESG(環境・社会・企業統治)経営も強化する。中長期的な視点で、より戦略的な対応を図っていく方針で、来年2月に具体策を公表するという。
2023年に過去最高の収益を
横浜ゴムの山石昌孝社長は2020年の経済状況について、「新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車産業を中心に第2四半期は急激な落ち込みとなった」とした上で、「この冬からの第3波による感染再拡大で、経済の先行きは予断を許さない状況にある」と話した。
同社では「新型コロナをリーマンショック以上の事態」と捉え、春に緊急事態対応プロジェクトを立ち上げ、固定費やコスト削減、設備投資の凍結などに取り組んだほか、物流の見直しによる国内の営業拠点の統廃合といった施策を実施してきた。
タイヤ事業では、新車用タイヤは第2四半期に大きく落ち込んだ需要が8月以降に持ち直しつつあるものの、第3四半期までは売上収益、事業利益ともに前年同期を下回って推移。市販用タイヤも昨年の暖冬の影響を受け年初の冬用タイヤの販売が低調だった。
ATG事業は、市販向けが回復基調にあるものの、農機メーカー向けの需要減及びインド政府の指示による操業停止が響いた。
なお、同社は11月に業績予想の上方修正を発表している。急激な需要の戻りに柔軟に対応し、新型コロナウイルス以外に、北米のタイ製品に対する増税、コンテナ不足といった課題にも全社を挙げて取り組む。
2021年の第1四半期は市場環境が厳しくなるものの、足元の状況から今年の第2四半期のような落ち込みはないと想定し、2019年に近い数字を目標とする。
またOHT事業は横浜ゴムに統合することを決めており、これにより1000億円規模の売上になるという。さらに、来年2月に発表予定の新中期経営計画作りを進めており、経済レベルが2019年並みに戻ると見込まれる2023年に2019年の売上収益を超えることを目指して計画を設計している。山石社長は「2023年に何としても過去最高を上回る数字を出していきたい」と意欲を示した。