ブリヂストンは1月28日、キリンホールディングス(キリン)との共同研究により、「グアユール」由来の天然ゴムの生産性を向上する技術開発に成功したと発表した。グアユールを安定的に増殖させる技術を開発したことで、今後は遺伝子情報から品種改良を行った優良種のグアユールの大量増殖が可能となる。既に自社農園に植えた苗木のフィールド評価を開始しており、2020年代にグアユールゴムのタイヤ材料としての実用化を目指す。
タイヤの原材料となる天然ゴムは現在、パラゴムノキから採取されており、産地が東南アジアに集中していることから、病害リスクや熱帯雨林の減少が課題となっていた。また、今後は世界的な人口増や自動車保有台数の拡大にともない、タイヤに必要な原材料の量も増大すると予測されている。そのため、複数のタイヤメーカーがサステナビリティ(持続可能性)の観点からも天然ゴムの代替原料の研究を加速しており、供給源の多様化に取り組んでいる。
その中でブリヂストンは米南西部からメキシコ北部が原産で、乾燥地帯で栽培することが可能なグアユールに着目。2014年には米アリゾナ州に研究所を開設し、実用化に向けた研究開発に着手していた。
ただ、グアユールは個体ごとのゴム含量に差があり、優良品種の安定した生産が実用化の壁となっていた。そうした中、2016年からキリンと協業してグアユールの苗を安定的に増殖させる研究をスタート。今回はブリヂストンのグアユールに関する知見とキリンの植物大量増殖技術を融合させることで、短期間で成果が得られたという。
同日開いた会見で、キリンR&D本部キリン中央研究所の間宮幹士研究員は「当社の袋型培養槽生産技術を活用し、グアユールの優秀系統の苗を増殖する実験を行ったところ、特殊な環境下で旺盛に増殖することを確認した」と成果を話した。
同一のグアユールを安定的に増殖させることが可能になれば、品種改良を行った優良種の大量増殖ができる。さらに、天然ゴムの収量を安定させながら生産性の高いグアユールの栽培が期待される。会見ではアリゾナ州にあるブリヂストンの農園に植えた苗木のフィールド評価を開始したことも明らかにした。
今後について、ブリヂストン先端材料部門長の大月正珠氏は「トラック・バス用タイヤや鉱山用タイヤなどのプレミアムゾーンへの適用を視野に検討を進めている」とした上で、「パラゴムノキから採取できる天然ゴムとは異なる特性を示すことが分かってきており、その特性を活かしたタイヤなどへも適用を考えていく」と見通しを示した。