国内タイヤメーカー4社の2020年12月期決算と2021年の業績予想が19日までに出そろった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で急減した需要が昨年後半から持ち直したことで、経営環境は好転。北米や中国など販売が好調な市場、ニーズが高まる大口径タイヤの需要はほぼ19年レベルまで回復するとの見通しもある中、今期は全社が増収増益を見込む。新型コロナの感染状況は引き続き注視していく必要があるが、昨年失われた需要を取り戻すべく、ビジネスが活発化しそうだ。
ブリヂストンの2021年のグローバルタイヤ販売は対前年比で乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤともにプラスを見込む。会見で菱沼直樹CFOは「2021年のタイヤ需要は19年レベルに近い水準まで回復を想定する」と話した。特に昨年新型コロナで大きな影響を受けた新車用で高い伸びが期待でき、市販用も欧州の消費財タイヤが前年並みとなる以外は各市場でプラスとなる見通し。
今期は米建築資材メーカーの売却益も計上し、最終損益は20年12月期の233億円の赤字から一転、2610億円の黒字へ転換する。
住友ゴム工業の21年のタイヤ事業の売上収益は前期比9％増の7420億円、事業利益は4％減の395億円を見込む。昨年12％減まで落ち込んだグローバルタイヤ販売本数は、今期は11％増の1億2111万本へ改善。19年の1億2436万本には届かないものの、生産量は19年と同レベルの69万6000トンを想定している。
設備投資額は2019年を上回る590億円を計画。山本悟社長は「昨年投資を抑制していた海外工場で増産投資を拡大するほか、国内で高機能商品への生産設備の置き換えを進める」と述べた。
横浜ゴムの今期のタイヤ事業は、需要回復にともない売上収益が7.7％増の4300億円、事業利益は39.7％増の335億円と予想。生産量は2019年を上回る計画で、グローバルタイヤ販売本数は前年比11％増を見込む。特に北米や欧州、アジアで大きく改善するほか、国内の新車用、市販用もそれぞれ4％のプラスとなる。
TOYO TIRE（トーヨータイヤ）は2021年も引き続き大口径SUV用タイヤの拡販に取り組み、タイヤ事業は2割の増益を見込む。
昨年着手した米国工場の第5期増強のセカンドステップ分は下期からフル生産を予定しており、米国市販用は14％増となる見込み。国内市販市場でも「オープンカントリー」のサイズ拡充を図ることなどで販売本数は7％増を計画している。
グローバルでのタイヤ生産量は過去最大規模の25万3100トンに達する見通しだ。
2020年4～6月期が底に
新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年。タイヤ需要は4～6月期を底に、夏以降は米国や中国などで回復が進んだほか、高性能タイヤの販売が支えとなった。また国内市場ではスタッドレス販売も収益増に寄与したもようだ。
ブリヂストンの菱沼CFOは前期について「第4四半期の需要減は限定的で、トラック・バス用タイヤを中心に第3四半期からの回復基調が継続した」と述べた。特に市販向けのTBRは前年を上回る水準まで回復。10～12月期のTBRの販売本数は国内が24％増、北米は13％増となった。
一方、年間では上期の落ち込みが大きく、消費財タイヤ、生産財タイヤともに3割を超える減益となった。また年間の最終損益は、海外工場の減損損失などを計上したことなどが響き、233億円の赤字（前期は2401億円の黒字）となった。
住友ゴムのタイヤ事業は売上収益、事業利益ともに1割以上のマイナスとなった。ただ、10～12月期の売上収益は前年に近い水準まで復調、グローバルでのタイヤ販売本数も5％増となった。山本社長は「一番厳しかった上期に回復期を想定しながら、各工場がSUV向けタイヤの準備を進め、需要に対応できた」と振り返った。
横浜ゴムのタイヤ事業は売上収益が1割減、事業利益が2割のマイナスとなった。一方、10～12月期の利益は過去最高を達成。山石昌孝社長は「ベースとなる自動車生産が回復し、国内で冬用タイヤの販売が好調だった。上期はコロナで苦しかったが、全社一丸で挽回できた」と話した。
トーヨータイヤのタイヤ事業は売上高が7.9％減の3066億900万円、営業利益は7.4％減の383億4200万円だった。マレーシアの工場閉鎖や免震ゴム対策費用を特損として計上し、純利益は半減した。
一方、タイヤ事業の営業利益率は前年を上回る12.5％と高水準を記録。清水隆史社長は「強みを持つ重点商品を展開する戦略が、下期からの需要復調局面に噛み合ったことで、業績回復に結びつけることができた」と評価した。