TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は競争優位性の高いタイヤカテゴリーを中心にグローバルで販売を強化していく。同社は2025年度までの中期経営計画「中計’21」で、新商品や基幹商品、差別化商品など自社の強みを具現化した商品群を「重点商品」と位置付けて販売構成比55%以上を目指す方針を打ち出している。汎用ゾーンでは新興国メーカーの台頭により価格競争が激しくなる中、強みに資源を集中して量より質の戦略を加速する。
清水隆史社長が本紙のインタビューに応じ、「市場ごとに重点商品を定義して強みを発揮できる商品開発を行い、それを確実に生産、販売していくことが基本的な方針になる」と述べた。同社が重点商品と位置付けるカテゴリーは、北米では大口径SUV・ピックアップトラック用タイヤなど、欧州ではオールシーズンタイヤやウィンタータイヤなどで、ターゲットを明確にして販売に注力していく。
新中計では同社の主要市場である北米、欧州、日本、アジアの各エリアで重点商品の販売比率55%以上を目標に掲げ、利益率を重視していく戦略を鮮明にした。これまで大口径タイヤの販売に注力してきた北米では、さらに高いゴールを目指す。
工場での生産品目も重点商品にシフトさせていく。来年4月には同社初の欧州生産拠点となるセルビア工場が立ち上がり、これまで現地向けの輸出を担っていた国内工場では設備の入れ替えを検討し、高付加価値商品を国内市場向けにタイムリーに供給できる体制を構築する。
2019年に資本業務提携した三菱商事との協業体制も一層進化する。国内市場では三菱商事のネットワークを活用して1000社以上の企業をリストアップし、アプローチを始めている。運送会社からカーディーラーなど幅広い業種をターゲットとしており、業界全体で大幅な需要拡大が見込めない国内市場でも販売の質と量を向上させていく。
同社の売上高の6割近くを占めている北米市場での戦略も強化する。清水社長は「SUVカテゴリーでも汎用的なサイズは既に新興国メーカーの参入による価格競争が始まっている」と指摘。高いユニフォミティとデザイン性で評価を受けている大口径タイヤの生産、販売へさらに注力することで、現在、本数シェア5・3%、売上ランキング7位のポジションを5年後には5位まで上げていきたい考えだ。
新中計ではDX(デジタルトランスフォーメーション)も柱の一つとなる。データの取り扱いなどをグローバルで統一し効率化を図るだけではなく、「将来のビジネス変革まで持っていきたい」(清水社長)と意気込む。例えば、重点商品の管理や商品サイクル、販売状況などを瞬時に分析して戦略を実行できるような体制を構築するという。
「量を追う拡大ではなく、質の変革による成長を志向する」――新しい変化を採り入れながら、基盤を底上げしていくことが新中計の大きなテーマとなる。最終年度の2025年にはどのような存在感を発揮しているのか注目だ。