住友ゴム工業は2020年2月、新中期経営計画を公表。その実行性を高めるために「Be The Changeプロジェクト」をスタートさせた。山本悟社長は本紙のインタビューで「その狙いは利益基盤と組織体質の強化にある。活動が従来のトップダウン型ではなくボトムアップ型であるのも特徴的な点。新たな企業風土を醸成しており、活動の成果に期待している」とし、同プロジェクトの滑り出しを高く評価する。
この新中計では「企業の経済的・社会的価値を高めるためのバリュードライバー」の一つとして「高機能商品の開発・増販」を掲げている。
山本社長は「これからの成長戦略を描くときに、『グローバルでの供給・サービス体制』『日米欧3極開発体制』は将来の競争優位を生む、非常に大切な柱になる」と語る。
「新車装着タイヤと市販用タイヤは密接にリンクする関係だ。世界の新車メーカーからの高いレベルの要求に応える商品をグローバルで開発し供給することが信頼関係をより強固にする。新車装着の拡大を図ることで、市販用タイヤ販売への波及を目指していく」、このように続ける。
製販の拠点についてはこれまで、収益の基盤となる日本・アジア地域、トルコ工場を新設した欧州・アフリカ地域では着実に生産体制の構築が進んでいる。米州でもブラジル工場が生産能力を順調に増強中だ。一方で北米地域ではグッドイヤー社とのアライアンス関係解消後の事業再構築が急務だった。
米国にテクニカルセンターを新設し、現地の市場ニーズに即した市販用タイヤの開発を推進。現在好調な販売推移を見せる「WILDPEAK(ワイルドピーク)A/T 3W」は北米市場のニーズを先取りし開発したオールテレーンタイヤだ。
これらFALKEN(ファルケン)ブランドの販売展開を拡大し、そのバリューアップに意欲的に取り組んできている。販売サポート活動の一環「FALKENアカデミー」など積極的な販売施策を展開しFALKENは大きく伸長。同市場における市販用乗用車用タイヤシェアで第5位へと躍進した。併せて価格ポジションも着実に向上したという。
「FALKENの販売数量増加・収益性向上が原動力」(山本社長)となり、北米事業の連結管理損益は一時的な低迷から回復。20年下期には黒字化を実現し、本年は通期で黒字化の見込みだ。アライアンス解消によりグッドイヤーから取得した米国工場の改善が寄与してくるという。
「グローバル供給体制を真に確立するためには、米国工場は欠かせない」と、山本社長は強調する。「北米市場は今後も伸びる見通し。そこで地産地消を目指すには、SUV用など生産がむずかしい大口径タイヤを作れる工場が必要だ。我々にはそのノウハウも実績もある。固定費を吸収しながらより利益を上げていくための投資を行うことで米国工場製タイヤビジネスでの黒字化を目指す」との考えを示す。
今後米国工場での増産投資を進めると同時に、日本の宮崎工場やタイ工場での生産品目をSUV用に置換し北米市場に供給。成長が続く同市場での増販に対応する。グローバル供給体制の構築をさらに加速させることで、世界市場で一層のプレゼンス向上を図る。