自動車産業全体でCASEやMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を見据えた変革が加速する中、タイヤも例外ではなくIoT(モノのインターネット)化が進みつつある。クラウドなどの外部とつながり、車両の管理や制御などに活用するための情報を取得する「センサー」としての機能に注目が集まっている。従来から取得可能だったタイヤの空気圧や温度データに加え、摩耗状態を自動で検知する技術開発が進められており、将来的にメンテナンスの効率化や省力化に寄与することが期待されている。
従来、タイヤメーカーはTPMS(タイヤ空気圧監視システム)などを活用した空気圧と温度の管理システムの展開を推進してきた。それに加えて、現在はタイヤの摩耗量を自動で検知する技術開発が活発化している。
国内メーカーでは、住友ゴム工業と横浜ゴム、TOYO TIRE(トーヨータイヤ)がそれぞれタイヤの摩耗検知システムを2023年までに実用化することを目指している。
住友ゴムは今年2月にタイヤの摩耗量推定技術を確立したと発表した。同社はこれまでもタイヤの回転で発生する車輪速信号の解析技術の開発に注力しており、この技術を活用したタイヤセンシング技術「センシングコア」を2017年に発表している。この技術は、追加のセンサーが不要なソフトウェア技術で、タイヤの空気圧や荷重、路面状態の検知機能が搭載されていた。
今回、摩耗の検知が可能になり、同社のオートモーティブシステム事業部DWSビジネスチームリーダーの川崎裕章氏は「タイヤの定期的な交換やローテーションの計画が組めるようになるなど、運送事業者にとって非常に役に立つ」と活用範囲の拡大を見通す。
横浜ゴムは2月に発表した乗用車用タイヤセンサーの中長期技術開発ビジョン「センサータイヤ・テクノロジー・ビジョン」の中で、2023年までに摩耗検知サービスを提供する計画を示した。
同社はアルプスアルパインと、タイヤ内面に貼り付けるセンサーの開発を進めており、ソリューションビジネスの展開を視野に入れた研究開発を行っている。
消費財製品企画部の白井顯一氏は、「事業者の困りごとにシステムで対応し、サービスとして提供していきたい。タイヤやセンサーだけを使って頂くのではなく、メンテナンスサービスに関わる付加価値を提案したい」と今後の展望を示す。
トーヨータイヤは昨年7月にトラック・バス用タイヤの摩耗状態推定モデルを構築したと発表した。同社では「トラックやバスでは特に摩耗が重視される」としており、運輸業界において人間が行ってきた点検や管理を自動化することで省力化へ寄与していく考えだ。現在は実用化に向けて運送会社の協力を得ながら実証実験に取り組んでおり、数カ月先の摩耗状態を予測できるように精度を高めていく。
また、ブリヂストンは2019年12月にタイヤ内面に貼り付けたセンサーにより、タイヤの荷重と摩耗状態を推定する技術を開発したと発表している。「安全性向上につながり、将来の自動運転社会における安全な走行制御への活用が期待できる」としている。
各社が進める摩耗状態検知機能は、メンテナンス作業の効率性向上に寄与し、タイヤ管理システムの利便性が一気に高まる可能性もある。今後、新しい技術やサービスの創出を見据えた開発が一層活発になりそうだ。