9月に入り北日本からスタッドレスタイヤの宣伝が始まるなど、冬タイヤ商戦が本格的にスタートする。昨シーズンは新型コロナウイルス感染拡大による消費マインドの落ち込みという大きな懸念材料があった中でも例年に比べて降雪が多く、販売を下支えする要因となった。一方で、今シーズンは複数のメーカーから消費財タイヤの大型商品が発売され、さらに店頭の賑わいが増していきそうだ。各社は様々な施策を打ち出して需要喚起に注力する。
日本自動車タイヤ協会(JATMA)によると、市販用の乗用車用スタッドレスタイヤのメーカー出荷は2020年の1400万7000本という実績に対し、今年は1割増の1546万4000本と見込まれている。2019年の実績(1685万1000本)には届かないものの、比較的降雪があった昨シーズンを上回る需要が期待されている。
こうした中、各社はユーザーから最もニーズが高い氷雪性能を磨き上げた新商品をはじめ、プレミアムラインに軸足を置き、アプローチを強めていく考えだ。
今シーズン、ブリヂストンは新商品「ブリザックVRX3」の訴求を基軸に拡販を図る。さらに、「VRX2」やSUV用「DM―V3」も加えたラインアップでユーザーの様々な要望に合わせた提案を進める。
住友ゴム工業は基幹商品の「ウインターマックス03」と、今年発売したSUV用スタッドレスタイヤ「ウインター マックスSJ8+」などを訴求していく。
乗用車用の基幹商品をリニューアルした横浜ゴムは、同社のスタッドレスタイヤとして“史上最高のアイス性能”と自信を示す「アイスガード7」を中心に拡販する。
TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は、ビジネスバン・小型トラック向けに「デルベックス935」を新発売したほか、サイズ数を拡充した「オブザーブ・ギズ2」を訴求。同社では「独自の商品群で冬商戦に臨める」と意欲を示す。
日本ミシュランタイヤは昨年発売した「エックス・アイス・スノー」のサイズを拡大。「より多くの消費者の方、車種に適合できる」としており、幅広くアピールしていく考えだ。また、ユーザーの使用環境によってはオールシーズンタイヤの新商品「クロスクライメート2」も積極的に提案する。
日本グッドイヤーは乗用車用スタッドレス「アイスナビ8」と、商用車用オールシーズンタイヤ「ベクター・フォーシーズンズ・カーゴ」の2モデルを上市。「新型コロナの影響を受ける前の2019年以上の販売本数を目指す」と意気込む。国内市場で早くから展開してきたオールシーズンは専用のカタログも作成。ユーザーの声などを掲載し、確実にメリットを伝えていく。
コロナ禍という環境での冬商戦も2年目に入る。以前は販売店向けの試乗会を開催し、それを通じて性能を体感する機会を増やしていたが、現在は大人数を集めたイベントは実施が困難になっている。そうした中で加速しているのがデジタルツールを活用したコミュニケーションだ。各社はウェブコンテンツを拡充させるとともに、店頭でも工夫をこらして性能の訴求に取り組む。
一方、住友ゴムのように「試走会でのコロナ感染防止対策マニュアル」を策定し、細心の注意を払いながら、少しでも多くの販売店が体感できる場を提供する試みもある。トーヨータイヤは「セールスは貴重なコミュニケーション機会」と位置づけて、販促施策をより丁寧に説明するという。
間もなく本格化する商戦に向けて、どこまで販売増につなげていけるか、期待は高まっている。