住友ゴム工業はタイヤの100%サステナブル化を目指して原材料開発の取り組みを加速する。同社は今年8月に2050年を目標年としたサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を発表した。この方針で改めて社会と環境、ガバナンスそれぞれの項目で目標を策定。9月22日に開いた会見でこの方針のうち、材料開発での目標や取り組みを説明した。
現在、世界的に求められているCO2排出量削減に向けて、住友ゴムはサプライチェーン全体を通じ、タイヤ・スポーツ・産業品の各事業での取り組みを推進する方針を打ち出した。
会見に出席した村岡清繁常務執行役員は「今後は長期方針に基づき、社会に貢献できる製品やサービスをさらに充実していく。その中でも材料開発は特に重要になる」と話し、原材料のサステナブル化も積極的に推し進める姿勢を鮮明にした。タイヤに使用する原材料のうち、バイオマス原材料やリサイクル原材料の比率を2030年までに40%、50年までに100%にすることを目標として掲げている。
一般的なタイヤは天然ゴムや合成ゴム、カーボンブラック、スチールコードなどで構成されており、有機物資源と無機物資源に分類できる。材料開発本部の上坂憲市材料企画部長は「有機物のサステナブル化を考えると、バイオマス原材料の活用が有力な手法となる」と説明する。
有機物のうち化石資源は合成ゴムやカーボンブラックなどで、タイヤ材料の約6割を占める。化石資源は燃焼するとCO2が排出されるが、植物バイオマス原材料は廃棄しても空気中のCO2濃度が増加しにくいという特徴がある。
同社ではこれまで、化石資源である石油資源に代わるバイオマス原材料の開発を進め、製品化にもこぎつけている。また、現在は業界で合成ゴムの原料となるブタジエンを植物から得られるグルコースなどの糖類から製造する技術の開発が進んでいるという。さらに、木材からカーボンブラックに変わるゴム用補強材料を作る取り組みもあり、活用を検討する。
植物バイオマスを活用することで最大で約78%の有機材料がバイオマス原材料に置き換わると予測されているが、100%サステナブル化を達成するためには無機物への対応も必要となる。ただ、無機物は植物中に含まれる量が少なく、リサイクル資源の活用が鍵となる。例えば、もみ殻を燃焼した灰からのシリカの製造や金属スクラップのリサイクルが候補として挙げられる。最終的には、バイオマス原材料とリサイクル原材料を組み合わせた資源循環する調達システムの確立を目指す。
サステナブル原材料の活用では、機能性や品質の改良が課題だという。上坂部長は「当社ではバイオマス原材料の特性を生かした高機能材料の開発を進めてきた」と話し、「今後もさらなる安全・安心を追求し、タイヤの機能性や品質向上のため、継続して開発を進める」と展望を示した。
さらに、将来に向けて新たな原材料の生産性向上やコスト対応も急務となるほか、安定調達も考慮する必要がある。安定調達のため、廃タイヤの原料化も検討しており、リサイクル技術の研究や開発にも注力していく。
今後はCO2排出量と価格、調達量から適正な原材料を選定し、新商品への採用を推進する。循環型ビジネスの確立に向け、研究開発のスピードが一段と上がりそうだ。