日本ミシュランタイヤはトラック・バス用タイヤ事業でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。11月から運送事業者向けに、タイヤトラブルが発生した際に活用できるレスキューサービスのデジタルアプリケーションを提供するほか、海外で展開しているタイヤ溝のセンシング技術やコネクテッドサービスの国内導入を検討していく。さらに、将来的にはタイヤの新品時から使用管理、リトレッドタイヤ、廃棄まで統合して管理できるようなデジタルプラットフォームを目指し、付加価値向上につなげる。
日本ミシュランタイヤは9月24日に会見を開き、富士運輸(奈良市)などと共同でミシュランレスキューネットワーク(MRN)のサービスを効率化するスマートフォン向けアプリ「MRN GO(ゴー)」を開発したと発表した。11月1日から大型トラックなどのユーザーに向けて提供を始める。同社によると、大型車向けレスキューサービスのデジタルアプリはタイヤ業界で初めてだという。
2004年から展開してきたMRNは、ミシュランのトラック・バス用タイヤを使用する運送事業者へ提供する有料のレスキューサービス。運行中の登録車両にタイヤトラブルが発生した際、コールセンターへ電話するとタイヤ販売店などが現地に駆けつけてサービスを提供するもの。現在、約1300店のサービス拠点を有し、約2000社(4万台)の車両が登録されている。
一方で近年は物流需要が拡大する中、さらなる業務の効率化が求められていた。「MRN GO」は、アプリをダウンロードして緊急時にボタンを押すだけで必要な情報を送信できる。タイヤの故障状態を画像でコールセンターへ送信でき、TPMS(タイヤ空気圧管理システム)が搭載されていれば、タイヤの温度や空気圧情報を送信することも可能となる。出動依頼を受けたMRN作業店は事前に状況を確認できるため、効率的に準備を行い、結果的に故障車両のダウンタイム削減につながっていく。
会見で須藤元社長は「ミシュランはタイヤと関連するサービスで生産性拡大に貢献することが責務と考えている。このサービスでは現在直面している課題解決に貢献できる」と述べた。また、開発に協力した富士運輸の松岡弘晃社長は、「ダウンタイムが削減されれば、顧客にも大きなメリットとなる」とその意義を強調した。
今後、「MRN GO」は2022年末に1万台の利用を目指し、さらに2026年にはMRN利用者の全てが移行することを目標にしている。同社はこのサービスで事業者の課題解決に貢献するとともに、付加価値としてユーザー拡大にもつなげていきたい考えだ。
B2B事業部の田中禎浩常務は「ミシュランを使用して頂くことで満足度が高まれば、お客様に選んで頂く機会も増えていく」と期待感を示す。その上で、「国内で効率化のニーズは確実にある」として、将来的には他のタイヤカテゴリーにもサービスを拡大することを検討していく。
「MRN GO」はタイヤの救援サービスの一部をデジタル化するツールとしてスタートするが、同社では今後も様々なデジタル技術を国内へ導入していく可能性を模索する。田中常務は「人手不足が進む日本だからこそ、先駆けて取り組む必要がある」と指摘。既に仏ミシュランが海外市場で実用化しているデジタルソリューションを、いかに日本市場に最適な形でビジネスモデルに組み込んでいくか調整を進めているという。将来は複数のデジタルサービスを統括できるプラットフォームの構築も視野に入れ、攻勢を強める考えだ。