国内タイヤメーカー4社の第3四半期(1~9月)決算が出揃った。新型コロナウイルスの影響が大きかった前年同期から需要が回復し、全社が大幅な収益の伸びを示した。新車用は自動車減産の影響が続いているものの、市販用は高性能タイヤの販売が好調だった。引き続きコロナの影響、原材料価格や輸送コストの高騰といった懸念材料はあるが、ミックスの改善効果も確実に高まっており、更なる収益向上が期待される。
◇ブリヂストン 市販用プレミアムタイヤが好調
ブリヂストンは新車用の販売が減速したものの、プレミアムカテゴリーで補修用の販売が好調に推移した。原材料価格の高騰や海上運賃の上昇を含む営業費が減益に響いた一方、数量や工場の稼働率回復に伴う加工費の改善、売値やミックスなどが増益に働いた。
タイヤ事業を財別にみると、乗用車・小型トラック用の売上収益が前年同期比19%増の1兆2155億円、調整後営業利益は約3.2倍の1711億円だった。特に、18インチ以上の大径タイヤの販売本数が25%増と大きく伸びた。このうち、市販用は28%増で、2019年比でも24%増となっている。
トラック・バス用の売上収益は23%増の5803億円で、調整後営業利益は約2.1倍の696億円。北米で補修用の販売が増えた。
会見で石橋秀一CEOは「第4四半期はスノーのビジネスが欧州と日本で大きく貢献してくる。そういったプラス要因で海上運賃の影響をオフセットし、原材料価格の上昇には値上げで対応していく」とコメントした。
◇住友ゴム 売上収益は過去最高に
住友ゴム工業の第3四半期決算は、同期として過去最高の売上収益を達成。事業利益は数量・構成や価格などが増益に寄与し、原材料を中心とする減益要因を相殺した。
タイヤ事業は売上収益が19.7%増の5518億9500万円、事業利益は約3倍の232億9700万円だった。7~9月期の販売本数は5%減の2708万本で、国内は市販用が1%増加した一方、新車用が21%減少した。海外市販用は欧州が伸長したものの、北米やアジアは前年実績を下回り、全体で4%減となった。
通期の業績予想は、足元の原材料価格の上昇や海上輸送コストの高騰を反映し、売上収益、各種利益を下方修正した。タイヤ事業は売上収益が前回発表から70億円減の7870億円、事業利益が95億円減の370億円の見通し。
◇横浜ゴム 四半期利益が過去最高に
横浜ゴムの第3四半期業績は利益がいずれも過去最高となった。タイヤ事業の売上収益は19.2%増の3173億5900万円、事業利益は221億4000万円(前年同期は5億1100万円)だった。タイヤ販売本数は14%増え、特にアジアが40%増と大きく伸長。欧州や北米、中国、ロシアも前年を上回った。国内は市販用が5%増となった。
ATG事業はオフハイウェイタイヤが好調で、売上収益は61.9%増の767億1600万円、事業利益は79.6%増の111億9400万円と大幅に増加した。
通期の事業利益と営業利益は前回予想からともに10億円上方修正し、それぞれ525億円、745億円とした。タイヤ事業の売上収益は新車用の落ち込みの影響で50億円下方修正し4600億円を見込む。一方、事業利益は市販用とのミックスにより5億円上振れる。
◇トーヨータイヤ 北米で市販用が好調
TOYO TIRE(トーヨータイヤ)は販管費や原材料がマイナスに響いたものの、販売要因や製造コストなどが増益に寄与し、営業利益が大幅に伸長した。
タイヤ事業の売上高は15.1%増の2539億6800万円。営業利益は71.3%増の411億6100万円となった。
市販用タイヤは、北米市場では大口径ライトトラック用タイヤやSUV用を中心に販売が好調で、値上げとの相乗効果により売上高が伸長。国内はSUV用の販売に注力し販売量と売上高がプラスとなった。
新車用は国内と北米を中心に新車販売の回復を受け、販売量と売上高が前年度を上回っている。一方、通期のタイヤ販売本数は国内外の新車用が前回予想より9ポイント下振れ4%増を見込む。