住友ゴム工業は7月に発行した「統合報告書2022」で、2021年度の「事業活動の環境負荷低減」に関する取り組みをまとめた。この活動は、同社のCSRガイドライン「GENKI」の枠組みの一つで、低炭素社会の構築や循環型社会の形成などを推進するもの。
具体的な取り組みでは、中国の常熟工場および湖南工場で、2022年1月から購入電力を全て再生可能エネルギーに切り替えた。これにより、今年度は2工場でのタイヤ製造時のCO2排出量は2021年度比で約70%の削減を見込む。あわせて、購入電力のさらなる削減を目指し、2022年下期に太陽光発電設備の導入を計画している。
また、タイヤライフサイクル全体でのCO2排出量減少にも注力しており、2021年度は2005年度比で16.0%以上削減することを目標に定めていた。ただ、昨年は新型コロナウイルスなどの影響を受け、タイヤの販売構成のうち低燃費タイヤの比率が低下したことから削減率は2020年度(12.9%)と比べて0.6ポイント低下し、12.3%となった。
生産時のCO2排出量は、生産量の増加や自家発電施設の故障が影響し、前年度比4万2000t-CO2増の27万8000t-CO2で、CO2排出量原単位は2.2%増加した。
住友ゴムでは「2022年度は省エネルギー活動としてエアー・蒸気の漏れ対策や、エアレス、ヒーターレス、廃熱回収、電動化、インバータ化などに幅広く取り組む」としている。
さらに、物流でのCO2排出量の削減にも取り組んでいるものの、生産・販売量の増加や平均輸送距離の増加でタイヤ輸送によるCO2排出量は12.4%増の2万7100t-CO2、原単位は3.9%増となった。今年度は、輸出品の生産工場最寄り港積みや需要予測精度の向上に取り組み削減を図る。
2021年度の廃棄物排出量削減では、海外工場で改善が進んだ。一方、国内工場では2月に発生した福島県沖地震の影響で主力の白川工場が操業停止し、災害廃棄物が発生したため悪化した。
住友ゴムでは世界的な水資源の不足の対応にも取り組んでいるが、2021年度は住友ゴムグループ全工場で水使用量が前年度比3.5%増、排水量は2.3%増となった。稼働日数が増加したことで総量が増えたが、原単位では良化しているという。
今後は継続して各拠点での各生産工程における使用量最適化や世界資源研究所(WRI)の水リスク評価を用いた対応策を推進していく。
なお、同社は生産拠点などから発生する臭気の改善も実施している。特に、中国の常熟工場と湖南工場では、法規制上の基準は満たした上で、ゴム練り工程や加硫工程から発生する臭気をさらに低減するため、新脱臭技術の開発や、蓄熱式脱臭装置(RTO)を導入した。この取り組みでは、自主的なパトロール時の感応評価で改善が見られたほか、周辺住民からの苦情が大幅に減少した。
事業活動による環境に対する影響への配慮は、消費者に信頼される企業として必須のものとなってきた。地震災害などの影響を受けつつも環境負荷低減の取り組みを続ける住友ゴムの活動は、社会からの一層の信用につながっていくだろう。