国内タイヤメーカー4社の1~6月期決算が出揃った。海外市場を中心に価格改定が進んだほか、為替の円安効果で全社が大幅な増収を達成した。一方、原材料価格や海上運賃、エネルギー費の高騰といったマイナス要因があり、2社が営業減益となった。下期も原材料高などマイナス影響は続くものの、市販用でプレミアムタイヤの販売拡大や値上げの浸透などが見込まれており、各社とも売上高は過去最高レベルを計画する。利益面で苦戦する住友ゴム工業は低採算商品の削減などに取り組み、利益基盤の再構築を推進していく方針を発表した。
ブリヂストンの上期業績は、乗用車・ライトトラック用事業の売上収益が前年同期比27%増の1兆48億円、営業利益は6%増の1191億円となった。グローバル販売本数は新車用が5%減となったものの、市販用は日米欧が好調で7%増となった。市販用の乗用車用タイヤで18インチ以上の大口径タイヤは17%増、2019年比でも44%増と大きく伸長した。
トラック・バス用事業の売上収益は31%増の4847億円、営業利益は21%増の495億円で、販売本数は全体で4%増だった。また、建設・鉱山用などを含む特殊タイヤ事業の売上収益は34%増の2566億円、営業利益は67%増の605億円となった。
地域別では特に欧州が堅調で、欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカセグメントの営業利益は390億円と前年同期の約2.4倍に達した。
通期の業績予想は売上収益と営業利益を上方修正した。継続事業ベースの純利益はロシア事業の損失や、ブリヂストンサイクルが実施する安全点検費用など合計326億円を調整項目として計上したことを受けて、前回予想から100億円減に修正した。
石橋秀一CEOは「通期でもプレミアムタイヤの拡販を図り、シェアアップを継続する。一過性のネガティブ影響を除いてビジネスの質向上を徹底し、稼ぐ力の再構築はほぼ達成できる。変化に対応できる強いブリヂストンへ近づくことができている」と述べた。
住友ゴム工業のタイヤ事業の売上収益は16.7%増の4308億5300万円だった。一方、海上運賃や原材料費の高騰で事業利益は67.4%減の76億5900万円と大幅に前年を下回った。
西口豪一専務執行役員は「国内では3月、4月の値上げはほぼ浸透したと見ているが、一部の生産財は苦戦している。海外では値上げが浸透している」と話した。
通期業績は、売上収益が同社グループとして初めて1兆円を超える見通し。ただ、下期も引き続き海上輸送費や原材料価格の高騰が続く想定から減益を見込む。タイヤ事業の売上収益は前年比24%増の9870億円、事業利益は47%減の220億円に修正した。それぞれ前回予想より45億円、100億円引き下げた。
海上運賃は今後ピークアウトすると想定し、影響が大きい北米や欧州向け出荷の販売見通しや現地在庫を考慮したきめ細やかな対応で運賃の抑制を図る。原材料費は高止まりが続く予測のもと、原材料やSKU(商品の最小管理単位)の削減に着手することで対応していく方針を示した。
横浜ゴムの上期業績は増収増益だった。山石昌孝社長は「ロシア・ウクライナ情勢のほか、原材料価格や物流費の高騰、自動車メーカーの減産影響など、厳しい経営環境だった」とした上で、「海外でのタイヤ販売やOHT(オフハイウェイタイヤ)の販売伸長、円安が寄与した」と話した。
タイヤ事業の売上収益は、31.6%増の3412億2100万円、事業利益は12.7%増の263億9300万円だった。半導体不足の影響を受け新車用タイヤの販売が落ち込んだものの、市販用は国内で冬タイヤが好調だったほか、北米や中国、インドで販売を増やした。また、YOHT(旧ATG)は農業機械用や産業車両用の販売増で64.1%増と前年同期を大きく上回った。
通期の業績予想は売上収益と各種利益を上方修正した。タイヤ事業の売上収益は29.5%増の7480億円(前回予想は6470億円)、事業利益は1.7%増の582億円(前回予想は527億円)を見込む。
TOYO TIRE(トーヨータイヤ)の上期業績は、純利益が上期として過去最高となった。営業利益は原材料費や海上運賃の高騰が響き減少したものの、販売好調が続く北米市場、マレーシアでのブランド切り替えによる構成の良化、為替円安がプラスに働いた。
タイヤ事業の売上高は、北米を中心に販売が伸長し22.5%増の2039億3600万円だった。一方、営業利益は2.0%減の273億3200万円となった。
会見で清水隆史社長は「北米市場はガソリン価格が上昇しているが、走行距離は減少していないため、好調は続いていく」と見通しを示した上で、「大口径タイヤのバックオーダーを抱えており、増産を行っていく」とコメントした。
通期の業績予想は、売上高と経常利益、純利益を上方修正しており、いずれも創業以来過去最高を見込む。タイヤ事業は価格改定効果などにより売上高を修正し、前年比28.6%増の4560億円(前回予想より160億円増)の見通し。なお、営業利益は据え置いた。