大型車のタイヤ脱落事故が2021年度に123件発生したことが国土交通省のまとめで分かった。事故件数は前年度より8件減少したものの、人身事故は5件発生した。国交省が2月に設置した「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」で事故車両の調査を行ったところ、事故を起こした車両では劣化したホイール・ナットが使用されていたり、タイヤ脱着時にホイール・ナットの清掃や潤滑剤の塗布が適切に行われていなかったりしたケースが確認された。これを受けて、国交省では大型車メーカー4社と連携してユーザーに対してタイヤ脱着時のホイール・ナットの保守管理について緊急点検を行うと発表した。
2021年度に起きた大型車(車両総重量8トン以上のトラックまたは乗車定員30人以上のバス)のタイヤ脱落事故は123件で、事故のうち人身事故は5件あった。
国交省のまとめによると、地域別(車両の本拠)では東北が45件と最も多く、関東が21件、北海道が17件、北信が14件と続いた。また、車輪脱着作業から1カ月以内に事故が発生したケースが77件と6割以上となり、脱輪したタイヤの位置はこれまでと同様に左後輪が96%と突出して多かった。
タイヤ脱着作業の実施者は大型車ユーザーが52%、タイヤ専業店等が28%などとなっているほか、作業内容ではタイヤ交換作業が66%と半数以上となった。
なお、過去5年間で車歴別の車輪脱落事故の発生件数を分析すると、最初の登録年から4年を経過した大型車で多く発生していることも明らかになっている。
大型車の車輪脱落事故防止対策を進めるために国交省が2月に設置した検討会は、2021年度に発生した車輪脱落事故車両123台のうち95台に対して、各部品の劣化・損傷状態やタイヤ脱着作業の実施状況を確認する調査を実施した。
その結果、ホイール・ボルトやナットに著しいさびがあるものやゴミなど異物が付着しているもの、ホイール・ナットとワッシャーの隙間に潤滑剤の塗布が見られずホイール・ナットがスムーズに回転しないものなど、適切なタイヤ脱着作業が行われていない車両が確認されたという。
こうした状況を踏まえ、国交省は10月1日から「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を開始した。期間は来年2月末までで、車齢4年以上の大型車ユーザーへダイレクトメールを郵送し、ホイール・ナットの適切な保守管理に関して緊急点検を進めていく。対象車両は2018年9月30日以前に登録された大型車約38万台。点検の結果、交換が必要な場合は大型車メーカーから左側後輪分の新品のホイール・ナットが無償で提供される。さらに、適切な脱着作業の動画やチラシを活用し、ユーザーや作業の関係者への啓発活動にも取り組む。
なお、車輪脱落事故は冬期に発生することが多く、2021年度の月別発生件数では11月から2月の4カ月間で合計79件の事故が起きた。特に12月は25件と最も多く、これから冬タイヤへの交換作業が本格化する中、適正な作業や確実な点検がより一層重要になってくる。