ブリヂストンは10月31日、ロシア事業から撤退すると発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受けて3月から稼働を停止していた乗用車用タイヤ工場と販売会社を現地の事業者へ譲渡する検討を始めた。同社では「供給の課題など先行きが不透明な中、事態を慎重かつ総合的に熟考した結果」としている。譲渡先の選定から手続き完了まで数カ月程度かかる見込み。
工場と販売会社の従業員数は約1000名で、3月以降も給与の支払いや福利厚生の提供を続けていたという。
ブリヂストンのグループ全体におけるロシア事業の売上収益は約2%弱。第2四半期決算でロシア事業の関連損失として、既に168億円を計上しており、今回の事業譲渡により追加で関連損失が発生する予定。ただ、年間の業績予想は変更しない。
また、フィンランドのノキアンタイヤは10月28日、ロシア事業を露エネルギー企業タトネフチに売却する契約に合意したと発表した。
売却額は約4億ユーロ(約588億円)を見込み、従業員を含めた譲渡となる。なお、最終的な金額は手元資金(ネットキャッシュ)や運転資本などの調整、為替の影響を受けるという。取引完了後、ノキアンはロシア市場の全ての事業を終了する。
同社では「ロシアからのタイヤ供給中止は、今後2~3年は中欧を中心に販売に悪影響を与える見通し」としており、製品の供給確保に向けてフィンランド工場や米国工場の増強、欧州での生産能力への投資を進めている。
ノキアンは2005年からロシアで操業しており、2021年の同社の売上高のうち約2割をロシア・アジア市場が占めたほか、乗用車用タイヤの8割はロシア工場で生産していた。
なお、仏ミシュランは年末までにロシア事業を現地経営陣に移管する計画を公表している。