TOYO TIREと富山大が共同研究。サーキュラー・エコノミー構築に大きく前進
TOYO TIREはこのほど、二酸化炭素(CO2)から高収率でブタジエンへ変換する新触媒を活用し、CO2を出発点にタイヤの主原料となるブタジエンゴム(BR)の合成に成功したと発表した。これは富山大学との共同研究によるもの。9日都内で開いた説明会で、同社は2020年代末までに実用化を目指す方針を明らかにした。
TOYO TIRE技術統括部門執行役員の島一郎中央研究所エンジニアリング本部長は「タイヤは原材料のおよそ半分がゴムで、そのうちの4割がBRなどの合成ゴムという割合。従来の石油由来のナフサに代わり天然由来の代替資源の活用を模索する中、BRの生成にCO2そのものを適用できないかという点に着目した」と、新手法の開発の背景について説明する。高性能の触媒の開発に取り組む富山大学と2016年から共同研究を開始。従来のナフサ由来のブタジエンではなく、CO2を出発物質としてBRを合成することに成功した。
今回の新技術は2段階による反応システムを経る。椿 範立教授によると、「触媒を利用した物質変換技術はこれまで白金など高価な貴金属を利用するケースが主。しかし環境やコストへの負荷が高い側面があった」と指摘。その上で「今回の新触媒では鉄や銅といった卑金属を用いることでそれらの課題を解消した」という。
島本部長は「新手法による変換効率は第1段階で40%、第2段階では60%。ラボベースだが現行では世界最高レベルの変換率」とする。現行の貴金属利用の場合でも第1段階での変換率は30%〜35%程度とされており、新技術のレベルの高さを伺わせる数値を示す。
タイヤのCO2排出LCA(ライフサイクルアセスメント)に照らし合わせると、この技術でLCA全体で2%、タイヤ生産における原材料調達時では18〜20%程度、それぞれ削減することが可能だという。
さらに今回の手法では変換が2段階という点も大きな特徴。今後はその変換を1段階とすることを目指すなど量産化を見据え技術の改良を続けていく。