クリーンで低コストな水素の活用を目指す
住友ゴム工業は7月24日、福島県の白河工場で推進する水素エネルギー活用の量産タイヤ製造時に、再生可能エネルギーを利用した水素製造施設、福島水素エネルギー研究フィールド(=FH2R、福島県浪江町)の水素を1カ月間にわたり供給を受けると発表した。この日開催した、近隣の小学生を対象とする「夏休みわくわく寺子屋in白河工場」イベントの中で明らかにした。
住友ゴム工業は白河工場で、近隣の小学生を対象とした「夏休みわくわく寺子屋in白河工場」イベントと、同社がサポートするSUPER GTのNAKAJIMA RACINGとの共同イベントを開催した。
同種のイベントは同社の泉大津工場や宮崎工場でも開催しているが、白河工場の河合亨工場長は「今回のイベントは当工場で推進している水素エネルギー研究に理解を深めてもらうとともに、施設内を環境学習の場として提供することで地域社会への貢献に繋げていきたい」と、イベントの開催意図について説明した。
同社では、サステナビリティ長期方針「弾むチャレンジ2050」を掲げ、2050年までにScope1、2におけるカーボンニュートラルの実現を目指している。その延長上で、水素エネルギー活用に着目。同工場で水素活用の実証実験を始めた。
今年の1月から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業によるサポートと再生可能エネルギーや水素の活用を推進する福島県からも支援を受けながら、水素エネルギーと太陽光発電の自然エネルギーを活用した日本初の製造時(Scope1、2)カーボンニュートラルを達成した量産タイヤの生産を開始した。
FH2R製の水素は今年4月に少量の供給を受けており、今回の活用はそれに続き2度目。
環境管理部水素プロジェクトグループ主査兼同工場環境管理課の川村隆司課長は「コスト面などクリアするべき課題はまだあるものの、FH2Rの太陽光発電を利用した水素は環境に配慮したもの。今後も引き続き、水素利用における技術の確立と展開を目指していきたい」と語る。
白河工場は来年操業50周年を迎える。操業時は高度成長期のなごりで、生産性と公害問題の対立軸で日本が揺れていた時代だったが、現代は環境保護が当たり前と変化した。
河合工場長は「一般的な工場の稼働サイクルは40年ぐらいと聞くが、それは物理的なことばかりでなく人的も言える。世代交代や状況の変化に対応して行く上で、いかに技術の継承と進化を遂げていくか。50周年を迎えるにあたり当然『次の100年を目指すには何をしていくべきか?』が問われる。今、推進している水素への取り組みはその答えの一つ」と言う。
施設内にある水素トレーラーの側面には、浪江町の子供たちが描いた絵とともに次のようなスローガンが書かれている。―「さあ、福島から水素で未来を紡ごう」―
今回のイベントでは、この水素トレーラーの実物見学や水素の特性や発生メカニズムを学ぶ実験も組み込まれ、身近に感じてもらう機会を設けた。子供らしい「○○って何?」という疑問や興味を、水素を切り口に地域の未来へと広げていく。その中心として、同工場の存在感はますます高まっていくことだろう。