国内新車用は順調に回復も市販用は足踏み。欧州、中国は厳しい市場環境続く
国内タイヤメーカー4社はこのほど、23年12月期第2四半期連結決算業績を発表。その中で上期のタイヤ販売本数の推移を明らかにした。市場別に市販用タイヤ(REP)と新車用タイヤ(OE)の対前年同期比について、①第1四半期実績(1Q)、②第2四半期実績(2Q)、③23年度通期予想——を各社の資料から〈一覧表〉としてまとめた。ただしブリヂストンは、市場別に乗用車用・小型トラック用(PSR/LTR)とトラック・バス用(TBR)ごとの①市販用、②新車用、③合計——について第1四半期と第2四半期を〈表〉としたが、23年度通期予想を発表していない。
4社の資料データを俯瞰すると、国内の新車用タイヤは新車生産・販売の回復基調に合わせ前年実績に対し伸長を示した。
一方、国内の市販用タイヤはコロナ禍明けからの経済回復が鈍化したこと、原・燃料費をはじめとする諸物価の高騰を受け消費マインドが冷え込んだことが市場に影響したと見られる。さらに上期に値上げ前の仮需要があったことから、その反動が下期にどのように現れるか、市場の今後の動きが注目される。
また目を海外市場に転じると、欧州と中国の市場環境が厳しさを増していることがうかがえる。
ブリヂストンの上期累計のタイヤ販売本数を見ると、欧州のPSR/LTR・OE114%、TBR・OE108%と、新車用は前年実績を上回った。しかし市販用はPSR/LTR・REP79%、TBR・REP58%と大きく落ち込んだ。
中国・アジア・大洋州は欧州ほど下振れを見せていないものの、PSR/LTR・OE92%、TBR・OE98%。PSR/LTR・REP94%、TBR・REP93%と、いずれも前年実績を割り込んだ。
欧州経済は23年下期から24年にかけしばらくの間、インフレ基調と金融引き締めが景気を押し下げ低成長が続くと見られる。
中国経済もゼロコロナ政策が終わり回復が見込まれたがその足取りは鈍化。下期はこのまま横ばいで推移するとの見方が強い。
また中国市場では新エネルギー車(EV=電気自動車、PHV=プラグインハイブリッド車、FCV=燃料自動車の総称)へのシフトチェンジが想定以上に早く劇的に進んでいる状況。EVの新興メーカー、BYDが急成長を遂げ、米テスラとの市場首位をめぐる競争は激化の一途をたどる。そのような市場環境で、日系メーカーはEV化の遅れが響き厳しい状況から抜け切れないと指摘される。
新エネルギー車のタイヤ取り替え需要の対応や現地新興メーカーへの新車納入ビジネスなど、中国市場でのタイヤ販売拡大に向けた取り組みが、この下期以降注目される。